本日日銀は追加緩和を見送りしました。それはサプライズではなく、寧ろ当然な成り行きであります。何しろ、いままでQQE政策が効かず、更に追加実施にしても効く保証はどこでもないから、追加緩和自体の意味合い、最早緊急時の保険しかありません。度々強調してきたように、日銀はそれを最後のカードとして温存するほかありません。

そもそも2013年4月から、黒田日銀総裁が主導したQQE政策、計366.6兆円の資産を購入しており、日本GDPの69%に相当、とんでもない規模に膨らまれています。どこまで巨大化されたかというと、単純に比較した場合、日銀のQQE総額、米FRB、ECのECBや英BOEの量的緩和金額を足した総額よりも大きく、このまま政策が継続していく場合、GDPの100%を超え、日銀の負債も前記中銀三行の負債総額より2倍まで膨らむ見通しです。因みに、日銀以外、米FRBがもっとも大規模な量的緩和を実施してきたが、それでもGDPの25%に過ぎなかったです。
この意味では、これ以上の追加緩和が必要ないばかりか、現在の政策自体、いずれ見直さないといけません。何しろ、国債市場、ほぼ日銀に「買占め」られ、株式ETFの3分の1以上も日銀が直接買っている状況は明らかに異常で、またいずれその反動が出てきます。国債市場の硬直化が確実に進んでおり、将来「出口なし」のリスクを考えると、更なる追加緩和、やはり正気の沙汰かとしか思いません。従って、今回日銀の決定はまことで、マーケットはいくべきところまで行っていると思われます。
一方、FOMCは年内利上げの余地を指摘、ウォール街の大半が米FRBの12月利上げを予想しています。いままで、利上げするかどうかに関して、FRBのスタンスが一進一退を繰り返してきたから、利上げの可能性を明白に表明したことで、ウォール街は明るいサインと受け止められ、一昨日株式の大幅上昇に繋がった模様です。
ところで、FRBのスタンスが急速に変わったわけではなく、あくまで12月会議にて利上げの可能性を検討すると表明しただけで、言わば状況次第といった変動要素がなお大きいです。従って、ウォール街が手放して歓迎しているように見えるが、表と裏の温度差が実に大きいかと思います。
一般論では、先物市場の値動きから計算される利上げの確率、60%に達さないとマーケットが利上げの可能性を織り込もうとしません。現在高くても50%の確率ということは、俗でいう半々だから、確信を持てるよりも確信を持たない意味合いが強いと見做されます。
従って、確実に追加緩和をできない日銀に対して、利上げかどうかはなお不透明なFRBがおり、ドル/円のトレンド、引き続き外部要素、即ちリスクオン/オフで左右されるかと推測されます。