前回の記事、猫も杓子もソロス、ソロスと騒いでいる間、危機は一旦緩和といった見方を示したが、すくなくとも現時点(日銀決定待ち)では筆者の想定通りの展開だ。ドル/円もダウ指数も日経平均も一旦リバウンド、ベアトレンドにおけるスピード調整を先行した。

もっとも、ソロス氏はご自身の影響力をよく知っている。故に、老獪な同氏、自分の発言を利用しないわけがない。氏は中国のハードランディングが避けられないと主張、米株、アジア通貨のショートに賭けていることを明らかにしていた。当然のように、マスコミが一斉に報道し、中国政府も躍起になって反論している。

しかし、冷静に考えてみれば、それは氏のポジショントークに過ぎないこと、そしてそのポジショントークに通じて市場の反応、中国政府の反応を探っていることも間違いないだろう。この真意をお分かりいただけるために、ポジショントークの定義から見る必要があるかと思います。以下はウィキペヂアの記述を引用:

ポジショントークとは、株式・為替・金利先物市場において、買い持ちや売り持ちのポジションを保有している著名な市場関係者が、自分のポジションに有利な方向に相場が動くように、市場心理を揺さぶる発言をマスメディア・媒体などを通して行うことを指す和製英語

和製英語だから、このままでは「外人」に通じないかと言えば、そうではないようだ。そもそもこの単語、バブル前外資銀行ディーラー同士の騙し合いをみて日本人が作った造語だが、彼らもよく知っているそうだ。何れにせよ、ポジショントークとは虚実混じりで相手の本音を引出し、また相手を騙すための戦術だと理解すればよいだろう。

だから、中国政府の躍起ぶりをみて、筆者は中国出身者として恥ずかしい思いが一杯だ。ソロスとはいえ、一介の民間人を国レベルの相手にするのは何事だ、大国の風格云々は勿論、相手が孫子兵法を使っているのではないか。それを見抜けないこと自体、中国官僚の劣化を象徴する出来事となり、また先祖に申し訳ないではないかと・・・・

ちょっと脱線したが、要するにソロスが公にて自分の手の内を見せてきたら、すくなくともその短期スパンにおいて、逆のことを考えないとバカだ、ということである。案の定、上海株、ソロス氏の発言に刺激されたかどうかは定めではないか、一昨日13月以来の安値を更新していたところ、ソロスのファンドが実に下値を拾っているといった情報が浮上してきた。
祖先の教えを忘れた中国官僚、人民元のショート筋に大打撃を与えたと自誇自賛しているが、本当はそうでしょうかは疑わしい。少なくともソロス氏は発言する前ショートポジションを決済し、場合によってはロングポジションを積み上げたに違いない。何しろ、メンツを重じる中国政府のお買い上げを容易に想定できかたからだ。お見事といいようがないが、複雑な気持ちだ。

だから、筆者は先週末から円のショートポジションを持ち始めた。理屈は簡単だ、前記のように、ソロス氏が手の内を見せてきたら、その逆にいかないと逆に怖いからだ。そして、相場の真実とは、値動きが先行で材料が後で付いてくる。そして、その後に付いてきた材料、なんと日銀のマイナス金利導入とは・・・・サプライズでありながら、驚きではない、相場はこんなもんだ。