昨日「ドラギ・バズーカ」は炸裂した。ECBは主要3金利の利下げを実行、QE規模と買い入れ範囲の拡大も同時に実施、ここまで踏み込むと、いつもの「ドラギ・マジック」はもちろん、「ドラギ・バズーカ」の言い方も軽く感じるほどだ。緩和戦争の最終兵器、つまり核爆弾が持ち出されたという市場関係者がいるほどだ。

この決定に反応し、ユーロは取りあえず暴落していた、ただ数分でユーロ/ドルは120pipsの下落を記録、東京時間10時40分前後1.0820の安値に達した。ユーロの下落と相俟って、金は1236ドルの安値をつけ、ユーロ/円も100pips超えた下落を記録した。

ウォール街は総じてECBの利下げを想定していたものの、三つの金利(リファイナンス、上限金利の限界貸出、下限金利の中銀預金金利)の同時利下げをビッグサプライズと捉え、シティーバンクは緊急ストラテジーを出し、ユーロ売りを推薦したほどだった。同ストラテジーは以下の通りだった

1.0879前後ショート、ターゲットは1.0400~1.0500、ストップは1.1080

しかし、このストラテジーをみて筆者は違和感を覚えた。なぜなら、マーケットは本当にECB政策をもってユーロ売りを仕掛けるなら、ユーロの急落があったものの、なお物足りと感じていた。また、少なくとも1.08関門を割らない限り、ユーロ安一辺倒ではなく、また1.08関門を割らない限り、言われたほどマーケットがユーロの安値を追う勢いを感じられなかった。何しろ、1.08関門は心理大台のほか、マーケットのサポート密集区域だったから、同関門を下回ることが先決条件であった。

その上、筆者は今年為替の動向が中央銀行の逆に動く(2月19日コラムをご参照)と考えているから、ドラギさんの会見で何等かのメッセージを発信、相場の逆転をもたらすのではと期待していた。その通り、ドラギさんは期待を裏切らず、「余計」の一言で相場の大逆転を引き起こした。

氏は「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」といい、日銀が導入している預金金利の階層構造の可能性も否定していた。これ受け、マーケットは一斉にユーロショートポジションを手仕舞い、今度は逆に壮大なショートポジションの踏み上げが見られた。状況は昨年12月ECB会合後とそっくりであった。

シティーバングさんのストラテジーが踏み上げられるに違いがないと考え、ここぞと筆者もストラテジーを出した。勿論反対のロングだ、内容は以下の通り(23:03前後)

1.1035で成り行きの買い、ターゲットは1.1200、指値の買いは1.0970~1.0990、ストップは1.0840

このストラテジーが成功の確率が非常に高いと考え、出した後筆者はパソコンの電源を切り、寝ていた。なぜなら、ECB政策をみて一斉にユーロ売りを仕掛けた筋が多かっただけに、この踏み上げは簡単に終わらず、また値幅が拡大していく公算が高いからだ。その上、前例があったから、より実行しやすかった。

その前提、言うまでもないが、昨年12月3日ECB金利決定後の大逆転だ。当時もユーロは1.0506の安値を付けた後、一晩で最大475pipsの上昇幅を達成していたから、昨日1.0821安値を起点とした切返し、400pip程度で考えてもやく1.1221前後の余地があり、自分の1.12ターゲットが達成されるはずだと自信を持っていた。実際昨日の高値は1.1218だった。

歴史は切り返す、という諺が正に昨日の市況を形容するにぷったりだ。あの口先介入能力の高いドラギ氏がどうして口を滑ったかと場関係者らは驚き禁じず、また愕然として相場を見ている間、素早く前例を思い出した者が割と簡単に勝っていた。この意味では、相場における勉強は過去のケース・スタディにあると言っても過言ではなかろう。

筆者はドラギ氏の失敗云々ではなく、マクロの視点で今回の市況を捉えるべきだと思う。何しろ、2月19日コラムにて指摘させていただいたように、「中銀の裏に道あり、花の山」だから、冷静に相場の反騰を確認してからショート筋を踏み上げていくことは本来誰でもできる簡単な戦略と戦術だと思う。ECBも日銀も前例を作ってくれていたから、なおさらだ。

ということになると、ひとつ仮説をお持ち出したい。つまり昨日ドラギ氏が「失言」しなかったらどうなるかである。結論から申し上げると、筆者は同じ結果になると思う。つまり、ドラギ総裁の言葉がなければ、ユーロは現在の水準にないと思うが、ユーロ売りがガンガン行っているとも思わず、安値圏での変動を経てまた切り返してくる公算が高いと思う。

何しろ、今年1月末日銀の失敗を思い出してほしい。マイナス金利QQEに踏み切る日銀の政策に反応し、ドル/円は当日(1月29日)121.69の高値を付けたものの、その後一転して急落、「9連陰」をもって2月11日にて110.94まで下落していた経緯があったから、今回ECB決定後マーケットの反応も同じになる公算が大きいと思っていた。

要するに、中央銀行の思惑を逆張りすることが今年の戦略として正解であれば、ECB会合後のメインストラテジーはユーロ売りではなくユーロ買いのほうが正解であった。違いは当日やるか、それとも後日やるかのみだった。この辺のことを悟れないと、一生相場の真実に近づけないかもしれない、曰く、相場は理外の理だ。


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