先週コラムの予想通り、米4月雇用統計が予想より大分悪かったにもかかわらず、ドル全体が上昇してきた。予め想定していた5つの市況の中、結果的に4番のほうが一番合っていたと思う。

言うまでもないが、筆者はこの間ドル全体の上昇に賭け、ドル/円も含め、短期スパンに限ってドルロングのスタンスで相場を臨んでいた。最近ドル/円とドルインデックスの連動性も高まってきたので、ドル/円のメインストラテジー、即ち戻り売りを一旦休み、短期スパンにおけるドル買いを繰り返している。(現執筆時点も)

度々強調してきたように、結局ファンダメンタルズが市場の内部構造を証左、また強化するための存在なので、前回コラムの指摘通り、ドルインデックスがテクニカルの視点ですでに一旦底打ちした公算が大きかった以上、米雇用統計云々で同構造を安易に修正できないから、先週末の結論を得られたわけだ。この意味では、本来誰でも得られる結論で、風見鶏風の「米雇用統計次第」といったセンセイらの解釈を聞かないほうがより市況を掴めるかと思う。

とは言え、ファンダメンタルズのすべてを無視するわけにはいかない。米追加利上げの有無がマーケットの焦点である以上、我々は同焦点について考える必要がある。これに関して、筆者が7日書いた文章が参考になれるかと思う。本文は以下の通り:

今週コラム(ザイFX!)にて米雇用統計がどうであれ、ドル全体(ドルインデックス)が堅調に推移するだろうとの予測を書かせていただいた。実際、同指標が市場予想よりかなり悪く、市場関係者を失望させたが、ドルインデックスは一時93.29まで落ちたものの、また93.90へ回復し、筆者の予想通り強かった。

こういった予想が当たる背景に、もっとも大きかったのがドルの「売られすぎ」だと思う。言い換えれば、指標が悪くてもドル全体が下げなかったのは他ならぬ、ドルインデックスが昨年8月安値を一時更新していたので、随分「悪い状況」を織り込んでいたからだ。

但し、指標自体の悪化に鑑み、FRBの追加利上げが一段と後ずれになる公算が高まっていることも事実だ。4月米雇用統計を受け、FRBが再び待機せざるを得ないだろうという認識が広がっている。ウォール街では、BNPパリバのような、「年内利上げなし」と主張する機関投資家も増えており、2017年さえできないだろう、といった「過激」な予想も出始めている模様だ。

とは言え、ドル全体のトレンドについて、FRB政策ほど弱くないといった感触が多いと思われる。豪州中銀の利下げを受け、ドイツ銀行を始め、機関投資家は更なる利下げ余地を指摘、豪ドル高が主因であることを強調しており、ユーロ高はもう頭打ちになったと読む流れもウォール街の主流のようだ。米国は当面(来年も?!)追加利上げなしと主張するBNPパリバさえ、計量モデルではユーロの「割高」を指摘、ユーロ売りを再開すべきだと主張している。来週からの市況、こういったセンチメントを織り込んでいくかどうかは見所であろう。

ということで、ドル全体のリバウンド、この前の「売られすぎ」の視点から捉えると、やはり追加利上げの有無との関係が薄まっている感じがする。ユーロが「割高」であれば、必然的にドルの買い戻しに繋がっていくので、自然な成り行きだと思う。この意味では、目先のドル高について、過大評価も禁物かと思う。換言すれば、ドル高にしても、ドル安にしても、目先テクニカル調整の段階におり、本格的なトレンドの発生を期待しにくい。