米6月追加利上げ観測が高まってきた。FOMC議事録が市場の想定よりタカ派だったとされ、ドルの切り返しを一段と加速した。前回コラムでも強調していたように、ドルインデックスが反騰しやすい段階におるから、こういった後付けの材料があっても自然な成り行きだと見る。

但し、こういった材料を過大解釈すべきではないと思う。何しろ、市場の想定自体が定かではない上、非常に流動的だったから、当てにならないというか、単純にこの前のコンセンサスに対する修正が効いたという側面が大きい。言い換えれば、この前4月米雇用統計が悪かったので、市場の米利上げ見通しが落ち込みすぎだった、ということだ。目下この程度の修正が容認範囲であり、ドル全面高がガンガン行けるとは限らない。

その上、何よりも注意していただきたいが、FRB理事らのスタンスを確信すべきではない。金利据え置きを強く主張した後、ただ2週間足らずで一転利上げを主張するようになった方もおるので、気を付けたい。タカ派と見られる人物らも公の場で散々言ってきたがから、別にサプライズではなく、単純に議事録という正式な文献で確認されただけの話で、現在の相場に織り込まれた公算が大きいと思う。

続いて、なりより重要なのは、イエレン議長のスタンスだ。ハト派とされる議長が今度どう判断するかは誰も断言できないが、安易にタカ派スタンスに転換できないことだけが確かだ。何しろ、この前追加利上げを見送った二つ理由、しっかり残しているからだ。

ひとつは世界金融相場の不安定だ。確かに昨年8月のショックから米株が大きく立ち直っているが、事の発端地、即ち中国の状況がなお危惧されている。人民元安のトレンドが再開される兆しがくすぶり、上海株が不安定な値動きを続いているから、いつ暴落してもおかしくない情勢だ。

上海株(上海証券総合指数)は年初安値の2638ポイントから4月の3000超まで一旦切り返しを果たしていたものの、現執筆の時点、また2800ポイント前後に下げてきた。昨年高値からすでに45%安の下落幅を記録したものの、同記録が近々塗りつぶされそうだ。それに伴い、人民元安の進行があれば、昨年8月のように、再度世界金融相場に打撃を与えるでしょう。欧州や日本など米以外の主要国の株価、昨年のショックから立ち直したといえず、混乱があれば、忽ちベアトレンドへ復帰することが容易に推測されるから、米株のみ堅調、というわけにはいかない。

もうひとつはドル高自体が利上げの障害になっていることだ。インフレ率を引き下げるドル高の進行が強ければ強いほど米利上げができなくなり、皮肉にもドル安のほうが米利上げに踏み切れやすい環境だといえる。だから、状況次第と思われるが、6月FRB政策会合までドル高がどこまで進めるかは焦点だ。利上げ観測が高まれば高いほどドル高につながりやすいが、ドル高ければ高いほど実際の利上げを遠さげる、といったジレンマがある以上、イエレン議長の判断が一層難しくなる。

いずれにせよ、ドルの切り返しを正当に評価しても、過大評価すべきではない。同じ理屈でいえば、ドル/円にも適用するロジックだ。先週コラムの指摘通り、ドルインデックスとドル/円の連想性が高まってきたから、同連動制がしばらく維持される限り、ドル/円の値動きも似てくるかと思う。


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