昨日BOE(英中央銀行)は2009年以来7年ぶりの利下げを実施した。0.25%の切り下げで英国金利も過去最低の水準を更新した。あのポンドがただ0.25%しか金利をつかないと思うと、なんとなく円のマイナス金利を容認してしまう気がする・・・・

ところで、今回英利下げは予想通り、また国際買い入れ規模の拡大はやや市場コンセンサスと違ったものの、基本的は許容範囲、別にサプライズではなかった。なのに、ポンドが大幅下落してきた。発表直前までポンドの上昇が見られたように、マーケットは利下げに反応したのではなく、カーニーBOE総裁の話やMPC(英金融政策委員会)議事録の基調に反応したと思われる。カーニー氏は「必要とされるあらゆる行動をとる」と強調、そして公開されたMPC議事要旨では、「過半数のメンバーは年末までに0%付近まで金利を引き下げると予想」と書かれているから、これから英国がEU、日本の後追う形でマイナス金利の世界に入ってもおかしくない、といった連想からポンドの売りが膨らんだ。

実際、現段階英国のマインス金利予想自体がかなり飛躍したシナリオとなるが、EU離脱に伴うリスクが増大し、英中銀が全力景気後退を阻止するため何でもやるといった姿勢が明確化されていたから、ポンド売りのほうが優勢になっても自然な成り行きだった。MPCメンバー全員(9名)が利下げと量的緩和拡大を支持していたから、英中銀の危機感の表れだと思われる。

もっとも、米利上げ周期入りに続き、英国がもっとも利上げ開始する国として注目されていた。EU離脱で利上げばかりか、一転して利下げ、それにゼロ金利になりかねない情勢で、英国経済の困境が浮かび上がる。IMFの予測では、今後3年間、英国GDPが累計1.4%の減速となり、極端の場合、5.6%の減速もあり得る。経済見通しの急変、英金融政策の大転換をもたらしたわけだ。

実際、英中銀の決定や示唆が米国金融政策にも影響を及ぶ。世界範囲の量的緩和の流れが広げていく中、米のみ利上げを加速していくのもなかなかハードルが高い。米国が今年1~2回利上げありといった観測が一段と不確実になり、今晩の米雇用統計など経済指標をもって検証されるものの、基本的には不透明さが増していくでしょう。

とはいえ、米国が仮に今年全く利上げできなくても、世界主要国において随一利上げ周期に入っているから、ドルは基本的に強くなるはずだ。しかし、現状を見る限り、ドルの強さ、いまいちモメンタムが足りない。

マイナス金利や量的緩和の最右翼、あのユーロさえは中段保ち合いを維持、昨日ポンドが大きく下げたとはいえ、まだ1.31台をキープ、対円では再度102関門を割り込み、7月安値を再打診する勢いだ。豪ドルに至っては、今週利下げしたものの、対ドルはむしろ上昇しており、その結果、ドルインデックスは今週かろうじて95関門を維持しただけで、どちらかというと、弱さが目立つほどだ。

こういった市況を証左するように、金の上昇が目立つ。金は昨日も大きく切り返し、7月高値1375ドルに近付いている。世界的な量的緩和の流れが「究極の通貨」金を押し上げ、本質的世界範囲の「通貨不信」、「中銀不信」の背景があったと思う。

言ってみれば、リーマンショック以降、世界経済が思ったほど回復されず、米株高も「偽りの株高」、即ち経済事態を反映したのではなく、量的緩和の結果であったと思われる。EUや日本は同じく前人未踏の領域に入ったマイナス金利や大規模な量的緩和を実施したものの、株高効果が長く続かなかったことは、米国市場より構造的な欠点があるとされているが、基本的に量的緩和策の限界を象徴する出来事だと見る。従って、随一利上げ周期に入ったドルが強くならず、金のみが連騰するのも一理があり、これから金が1400ドル以上の高値トライがあってもおかしくなかろう。米国も含め、しばらく世界金融政策の視野不良で金が買われやすく、また随一リスクヘッジをできる資産として重視されるでしょう。

こういうとお分かりいただけるように、従来安全資産、リスク回避資産とされるドルと円、やはり金に比べその地位が沈下する傾向にあるかと思う。その上、ドル高基調が保たれるものの、諸外貨に対する優位性、2015年前半までのような勢いを期待できないかと見る。

ドル/円に限定した話では、102関門を一旦再度割り込んでいるものの、99円~100円といったメインサポートを割らない限り、筆者はなお円高の進行に懐疑的だ。テクニカル上の根拠、やはり一旦6月23日高値をブレイクしていたことを重視すれば、あの2月以来の円高の勢いが再来しにくいのでは。円高トレンドの一服が予想される。


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