新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

新年早々、ドル高基調に「異変」が生じてきた。昨日ドル全体の反落、少なくとも「トランプ・ラリー」の一服を示唆するサインとして受け取られ、目先ドル高基調が維持されても、スピード調整が続く公算。

ドルインデックスのサイン、昨年トランプ氏が米大統領に選出された11月9日安値を起点とした「上昇ウェジ」の下放れが確認され、また「トリプル・トップ」を形成してから反転されたわけだから、蓋然性が大きいかと思う。同見方が正しければ、行き過ぎた所謂「トランプ・ラリー」に対する修正もそれなりのインパクトをもつかと思われる。

昨年年末の本コラムが指摘していたように、今年は相場における不確実性が高く、また所謂「ブラック・スワン」的な事件が頻発可能性は大きいから、先入観をもって相場に臨むのがもってのほか。そもそも「トランプ・ラリー」自体が、未知数の「トランプノミクス」が仮に実現される場合の、その成果の大分を織り込んでいるというか、先走りしてきたから、例え「ブラック・スワン」が出現しなくても、安心できる状態ではないので、ドル高一辺倒の見通しにやはり距離を置いたほうが賢明だと言える。

実際、昨日ドルの急落、人民元の異変とリンクして発生していたと思われるが、人民元相場の異変が「ブラック・スワン」まで呼ばれなくてもそのような性質をもつ出来事だと思う。同じく中国発の材料だから、昨年年初上海株の急落が相場に大きなインパクトをもたらした前例に鑑み、軽くパースできる問題でもなさそうだ。

4日、人民元安の勢いを止めるべく、中国人民銀行(中央銀行)と見られる介入筋がオフショア人民元マーケットにて猛烈な人民元買いを仕掛け、また流動性を無くすように人民元の貸出をコントロールしたと言われる。このような仕掛け、相場は昨年何度も経験したが、今回の勢いがもっとも大きかった。一時1000pipsの上昇を果たした人民元、リスクオフの材料として昨日朝からドル売り・円買いの値動きを加速、ドル全体の反転をもたらしたわけだ。

世界経済が中国景気動向に左右されるといっても過言ではない昨今において、不安定な人民元相場が為替市場のリスク要素として意識されてもおかしくない。それどころか、管理相場である人民元相場の動向が直接ドル/円などの自由取引市場に直接大きな影響を当たす前提、昨年8月の人民元切り下げ騒動で見られたように、相場を逆転させるきっかけとして十分あり得るので、これからも人民元相場の動向に目を離せない。

一方、相場の出来事、単独に捉える場合、往々にして大局観を失われがちだ。人民元相場における変動がドル全体の頭打ちに繋がったとすれば、それは人民元や中国経済云々ではなく、相場全体の問題と捉えるべきだ。

要するに、「トランプ・ラリー」が行き過ぎた分、市場はすでに疑心暗鬼の段階にきているのでは。トランプ氏のホワイトハウス入りが近付けば近いほど、市場関係者らはポビュリズムから目を覚め、だんだん不安になってくるわけだ。「我々トランプ氏に賭けすぎてないか」と自問する市場関係者が多くなるにつれ、ポジションの戻しが生じされやすい。何等かの大きな変動があれば、皆が一斉に手持ちのポジションを手仕舞い、リスクを削ろうとするわけだから、米国債が買われ、ドルが売られ、そして金が買われたわけだ。人民元相場における中国人民銀行の介入(正式的には否定されているが)がタイミングにあっただけに、人民元の急騰が相場全体のポジション調整のきっかけになったわけだ。

今晩米雇用統計次第、また一波乱が想定されるが、ドルインデックスにおける「トリプル・トップ」の構造が否定されない限り、同指標が良くてもドル高が限定的のではとみる。市況はいかに。