9月FOMC議事録が公開された後、ドル高が一段と進み、ドル/円も昨日104.64まで切り返しの高値を達成した。要するに、「早期利上げが適切」といったFOMCの議事要旨にマーケットが反映したわけだ。 一方、ここまで来て「早期利上げ」自体の意味が薄くなっているというか、やや滑稽に聞こえる。何しろ、昨年年末の時点、2016年FOMCが4回利上げありと予想されていたし、途中にて「最低2回」と修正された経緯があった。が、いつの間に「年内利上げの有無」の論争となり、いくら早期と言っても結局12月にあるかないかの問題で、果たして早期と言えるかどうかと違和感を覚える方も多いかと思う。 このせいか、「FRBが利上げ詐欺」していると激しく批判する者も出たほど、イエレン議長をはじめ、FRBに厳しい意見が散見される。こういったリスクを承知した上、FRBが利上げを踏み切れないのが他ならぬ、経済成長や雇用環境の改善にFRBが確信をもって判断できずにいる、ということのほかあるまい。だから、いくら「早期利上げ」と主張しても、利上げ自体がなお流動的で、たとえ今年12月の利上げ可能性が大きくなっているとしても、現時点確実視すべきではないかと思う。 最大の障害は景気や雇用よりも米大統領選の結果であろう。確かにトランプ氏が現在苦戦している模様だが、クリントン女史がこれでも圧倒的な支持率を獲得していないので、結果がどうなるかは油断できない情勢だ。10年前とはいえ、トランプ氏の猥褻話が下品すぎて、普通ならとっくに退選に追い込まれてもおかしくないが、それでも彼が一定の支持率をキープしていること自体、クリントン氏への逆風と読むべきかと思われる。いずにせよ、米大統領選自体が流動的で、6月の英EU離脱投票と同様、市場のコンセンサスが「裏切られる」リスクが大きいから、現時点慎重なスタンスを保つべきだと思う。 もっとも、政治的な要素を配慮しないことはFRBがずっと表明してきたスタンスであり、米大統領選自体よりも、金融市場の動向が障害としてありえる。いうまでもないが、「問題児」のトランプ氏が米大統領に選出される場合、一時にせよ、世界金融市場の動揺が避けられず、状況次第、FRBが利上げできなくなるといった可能性も十分想定される。トランプ氏が苦戦と伝われば伝われるほど、このような「サプライズ」が発生しやすく、また影響力(破壊力とも言うべきか)も強くなるから、米大統領選の結果が出るまで、米「早期利上げ」に関する断定的な見方を取らないほうが無難だ。 ドル/円に関しては、要するに円高方向に動くモメンタムが大分低下しているものの、直ちに円安方向に進みかと聞かれると、確信を持てない。目先、市場は「米早期利上げ」云々でドル買い・円売りを仕掛けているが、前述のように、もはや「早期」なんかをとっても言えない現時点、単に材料の蒸し返しにすぎない、といった感じが強いから、継続力に疑問だ。 もっとも、2012年末から昨年夏場までの大幅ドル高・円安自体が、日銀政策のみならず、米大幅利上げの見通しを先に織り込んできた経緯がある。2014年からのドル高、特に予想された日米金利差の開きを目一杯織り込んできたと思われる。これについて、FRB幹部のブレイナ―ド氏が今年6月講演の中、「14年6月から16年1月までのドル上昇、概ねFF金利にして200ベーシスポイントの利上げに相当する」と指摘した通りであり、極めて正論だと思う。 1回の利上げを25ベーシスポイントと想定するのが普通なので、200ベーシスポイントなら、八回の利上げ回数に相当する。が、昨年年末米利上げ再開された以来、まだ一回も利上げしていないので、果たしてドル高の根拠、こまで「ホンモノ」であろうか。この意味あいにおいて、前述のように、米「早期」利上げするからドル買い、いったロジック自体、説得力に欠けるというか、やや滑稽さえ聞こえるわけだ。 日本サイドでは、日銀政策が「わかりにくく」なってきたにつれ、いろんな見方が出てきた。元米財務長官のサマーズ氏による「実質ヘリマネ」論が出た後、それに追随する国内のエコノミストが同じ見方を示すようになったのも不思議な光景だ。そもそもサマーズ氏ご自身、あのリーマンショックの遠因を作った張本人とされたから、彼の見方を鵜呑みするのが危険だと思う。どんな立場でどんな思惑で発言したかをわからないまま付随するのもリスキーな行為だと思う。 一般論として、日銀先月の会合において総括を行い、政策の枠組みを資金供給量から長短金利操作へ変更したから、むしろ金利重視の視点で言うと、従来の量的緩和からより質を重視する路線になった思惑が大きい。従って、「ヘリマネ」ばかりか、量的緩和の縮小で為替効果に限界ありと日銀が認識し、軌道修正が行われたという見方のほうが正しいと思う。 黒田さんが日銀総裁になってから、日本の通貨供給量がどんどん膨らんで、マネタリーベースではGDPと同額の400兆円規模になっている模様。これでも円安にもっていけないから、流石日銀でもこれ以上量的緩和を続くには無理がある。なので、サマーズ氏のご指摘、全くあってないと思い、それに踊りされた円売りの投機筋、長く続かないのでは。量的緩和の終焉で事実上円買いの材料と化すから、次第に為替相場もファンダメンタルズに沿った形で日銀政策の展開を織り込んでいくでしょう。 最後に、ドル高全体に距離を持ちたいが、随一対ポンドの相場、ドル高がこれから続く余地が大きいと思う。換言すれば、すでに「底割れ」した見えるポンドの底、まだまだ下にあるから、安易な底打ちを想定しないほうがよさそうだ。余談だが、実質レートで言うと、ポンドはすでに168年ぶりの安値を付けている(FT紙の報道)と言われ、今年イギリス旅行に行かないと、歴史的なチャンスを見逃すことになるかもしれない。市況はいかに


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