米年内利上げ観測は高まっています。イエレンFRB議長は年内利上げの可能性を示唆した上、状況次第とも強調しているから、本日夜リリースされる米10月雇用統計が肝心です。市場関係者なら、誰でも固唾を飲んで待っていると言っても過言ではありません。

11月4日、イエレン議長のほか、副議長のスタンレー・フィッシャー氏やNY連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏の発言も年内利上げを支持する基調だったので、マーケットはドルロングに傾いており、今晩の指標にお墨付きを得た場合、ドルの一段上昇が見られるかと思います。

シカゴフェデラル・ファンド金利先物市場の値動きでみると、市場は米12月利上げの確率を56%程度と織り込んでいます。マーケットの予想通り(非農業部門雇用者数17万~18万増)を超えるなら、同確率が一段と上昇し、60%を超えることが予想されます。

ところで、なぜ60市場予想が重要かというと、実はイエレン議長が市場の安定を一番気になり、市場の顔色を窺え過ぎたといった批判が出るほど慎重なスタンスを取っているからです。マーケットがイエレンさんの発言を敏感に反応する一方、イエレン女史をはじめ、FRBが実に市場の反応を見極めているといったやや奇妙な光景ですが、マーケットの波乱を招くような判断を避けたいという立場では、イエレンさんの慎重姿勢が理に適います。

何しろ、リーマンショックの前例があったように、金融相場の崩壊や波乱、実体経済に多大な打撃を与え、回復するのは何年もかかり、また大きな犠牲が強いられたことFRBにとっても、世界にとって記憶に新しいです。単純に経済状況のみ、市場の反応を配慮しない政策判断、今ではどこの中央銀行もできなくなっているでしょう。ましてや10年以来初の利上げだから、金融政策の大転換、金融市場の安定なしではあり得ません。

この意味では最近世界株式市場の回復、米早期利上げに追い風だと言えます。但し、こういった確信、9月米雇用統計のような事態があれば、再び崩れかねない。10月2日リリースされた米9月雇用統計、予想より遥かに少なかったことを受け、ドルの失望売りを誘ったことも市場関係者にとってこの間の出来事でした。

実際、10月のデータ以外、9月指標がどれぐらい修正されかたかも非常に重要だと思い、仮に市場予想通りの結果が出っても、9月指標が修正されない限り、FRBの慎重さを崩すには力不足かと思われ、ドルの急伸に繋がるとは限らないと思います。勿論、9月のようなショックが出れば、反動が非常に大きいので、マーケットの波乱を注意しておきたい。