今回のテーマは日銀の追加緩和思惑です。結論から申し上げますと、ドル/円の下支えとなる同材料、徐々に剥落していくではないかと思います。

もっとも気になるのが、アベノミクスの「仕掛け人」と見做される自民党の山本幸三議院が7日、「アベノミクスの本質は金融政策」と言い、「円安は貧困層に苦境をもたらせている」と発言したでした。これは明らかに安倍政権が円安推進政策に距離を置き始めたサインではないかと読み取れます。

「アベノミクスの本質は金融政策」は正に正論でありますが、仕掛け人の口から聞こえるとは思いませんでした。何しろ、アベノミクスの中身がなく、或いは政策目標が全く達成されておらず、日銀政策頼りだといった批判がずっとあったから、本質が金融政策だと今更言うと、アベノミクスが失敗したと認めるような発言と受け取られてもおかしくないからです。

その上、貧困層云々があくまで建前で、本音としてやはり円安が物価目標にも、成長戦略にもメリットのみではなく、デメリットも大きいことを認識し始まったではないかと思います。それ以上の円安がいらないなら、日銀追加緩和の必要もなくなります。日銀が2回のQQEをもって物価目標を達成できずにおり、来年にずれ込んでも目標達成がほぼ不可能と思われる中、QQE3の大義名分がなくなりつつあると言えます。

そもそも一旦壊れた相場、修復するには時間がかかる上、何らかの決定期な要素なしでは難しいとされます。株高/円安相場の頭打ち、すでに確認されていたとすれば、質と量の両方において政策余地が限られるなら、日銀追加緩和があっても、政策自体の追加よりも、相場対策の意味合いが大きくなります。従って、今後出現し得る株暴落/円急騰の面に対応する最後の一手として、日銀がしばらく追加緩和を封印し、今月末も動かないではないかと思います。

それに、TPPの合意も大きな材料となります。TPPに懐疑的な米議会の承認待ちの中、追加緩和自体が為替対策だと「勘違い」されても仕方がありません。株暴落/円急騰でなければ、説明が付かない可能性が大きいので、見送りされる公算が大きいと思われます。

最後に米サイドの問題ですが、昨日リリースされたFOMC議事録に、「さらにドルが一段と上昇し、米インフレを押し下げる可能性があるとの認識が示された」と書いてあります。FRBのドル高けん制を一段と鮮明化した現時点では、すでに上昇モメンタムを失っていたドル全体の値動きが一段と軟調になっていくことも推測されます。市況は如何に。