ドル/円は下げ一服、またリバウンドしている。前回コラムの指摘通り、105~106円のメインターゲット達成がいったん後ずれされ、目先スピード調整の段階におることが明らかだ。

先週末の時点で、こういった結論を得られたのがほかならぬ、多くのドルロング派が先週後半転向していたことにヒントを得られた側面が大きかった。経験則では、メイントレンドを間違った方が焦って転向し始まったら、往々にしてトレンドの進行がもっとも激しい時と重ねるから、トレンド自体が維持されても、スピード調整のタイミングに近付くケースが多かった。

先週後半に入り、ドルの押し目買いを勧めた方やヘッジファンドの円高戦略転向といった「内部情報」をほのめかした方が流石堪えず転向したことがドル安/円高一服のサインを灯したと言えるなら、よく揶揄される風見鶏でも容易くやれるものではないと思う。何故なら、風見しようとしても、そのタイミングを間違えば、ただの鶏になるリスクが高いからだ。

ところで、ドル/円とドルインデックスの連動性、昨年12月以来高まってきた。従って、ドル/円の下げ一服、ドルインデックスの下げ一服とリンクした視点でみると、よりお分かりいただけるかと思う。

昨年12月高値から、ドルインデックスが大型「下落ウェッジ」型というフォーメーションを形成して下落してきた。安値が切り下げてきたものの、日足におけるRSIの安値水準がほぼ同等だったので、足許の反騰、同「下落ウェッジ型」がすでに完成され、また上放れされた、と言った可能性が強まっている。

下落ウェッジと捉える場合、昨年12月安値(a)から2月安値(b)を連結するサポートライン、この前の安値(11日、12日安値、c)と合致していたことがもっとも大きなヒントであった。その上、昨年10月安値93.96をいったん割り込んだものの、急落せず反騰してきたことに鑑み、目先ドル安トレンドの一服をより鮮明化してきたと言える。

ドルインデックスの上昇、「米利上げ観測後退」の後退が大きな背景にあると思う。イエレンのハト派スタンスと違い、地方連銀総裁らは繰り返しタカ派のスタンスを表明、4月利上げの可能性がほぼないものの、これから利上げ加速してくるのではといった市場関係者らの疑心暗鬼を誘った。

もっとも、イエレンFRB議長が利上げの延期理由について、中国景気減速と市場の安定性を挙げていた。この二つの要因、足許揃って「改善」されているから、利上げを阻止する目立った障害がなくなっていることも市場関係者らの思惑を膨らませた。

市場の予想が暗かったせいか、中国最近の貿易収支や本日好評されたGDPの数字も市場のコンセンサスよりよかった。その上、上海株もNY株も大きくリバウンドしてきているから、市場の混乱を想定した利上げ延期という根拠が薄まれてきたと言える。

こういった見方が正しいかどうはともかく、目先ドル全面安に対する修正があってもおかしくなく、またなお修正の途中におることを記しておきたい。換言すれば、チャイナリスクの再浮上や世界金融市場の混乱が再度拡大してこない限り、ドル売りに躊躇する市場関係者が多いはずだ。故に、この前ショートしていたポジション、買戻しされがちなので、ドル全体の反騰も暫く続くかと思う。

但し、この先、ドル/円とドルインデックスの相関性、このまま高い水準を保つとは限らない。何しろ、ドルインデックスの反騰、対円よりも、対ユーロ、ポンドなど外貨のほうがよりパフォーマンスがよいはずだ。この場合、ドル高/ユーロ安、またはドル高/ポンド安をもってユーロ安/円高、またはポンド安/円高につながり、クロス円の売り圧力が結果的にドル/円の反騰を抑える存在となるから、軽視すべきではないと思う。

詰まるところ、ドル/円の内部構造自体がドルの大幅反騰を許していないから、相場を予想するのではなく、相場のことを相場に聞くなら、ドル/円の日足を観察すれば、ドルの頭が重い、ということが誰でも分かるでしょう。何等かの特別な材料がない限り、ドル安/円高のトレンドが継続される公算が極めて大きいことも自明の理だ。

もっともシンプルなテクニカル・ツール、つまり抵抗ラインをもって見れば分かるように、抵抗ライン1と抵抗ライン2が合致している111関門前後がもっとも重要な抵抗ゾーンとなる。それをブレイクしない限り、ドル高/円安云々は単に戯言に過ぎないことが示唆される。

その上、何等かの特別の材料(財政出動、日銀介入、或いはマイナス金利拡大などなど)があっても、メイン抵抗ラインの3を突破するのが至難だと思われる。あれはかつての「黒田防衛ライン」と言われただけに、相場の心理関門として大きな抵抗と化しているから、現在「黒田抵抗ライン」として意識されるべきであろう。仮に日銀の介入があっても、このラインを上回っていくとは現時点、最早誰も断言できなくなっているでしょう。