昨晩USDJPYが149.70近辺まで上昇し、市場では介入警戒感が一層高まっています。米国の金融引き締めが長引くという観測から、USDの上昇が続いていますが、そのペースは緩やかで市場は比較的落ち着いています。1日に30~50銭しか円安が進まない、ボラティリティの低い市場の中、財務省は実弾介入を近々に実行するのか。ちょっと前回の介入を参考に私見を書いてみることにしました。

ご存じのように、今は米長期金利が上昇しています。前述の米国の金融引き締めの長期化も要因ですが、もうひとつ今話題になっているのは、米連邦議会が予算案をまとめられず、米政府機関閉鎖の懸念が高まっていることです。これにより、市場は財政運営の混乱を懸念し、格付け会社も米債格付け引き下げを示唆して、米長期国債が売られています。米金利の上昇を背景にUSDJPYが買われている状況下、マスコミや世間の圧力といった政治的要因で、単に円安が進んでいるからといって財務省がすぐに介入するとは、過去の事例から言って考えにくいのではないかと思います。介入はするにしても、単に焼け石に水で終わるような介入はしないと思います。

昨年10月21日金曜日の夜中の介入では、USDJPYが151.95近辺の高値をNY市場でつけ、1日の円安になった値幅が2円近くになったことが主な出動理由だったと思いますが、もうひとつWSJ誌がFOMCの利上げ幅の縮小を話し合うという憶測記事をだし、米債が買われ米金利が低下したタイミングだったということが、介入を成功させた大きな要因だと思います。2022年10月21日の介入について、翌日に私はGLAFXの朝の検証編で解説しています。GLAFXの宣伝も兼ねて(笑)ここに原文抜粋を掲載します。夜中の介入は想定外でしたが、翌週24日月曜日のアジアでの介入を予測的中させています。

GLAFX 朝の検証編 2022年10月22日号(一部抜粋)

『昨晩の介入については、したしてないの議論がSNS上に多数ありましたが、23時35分からのUSDJPYの下落は、私の経験してきた値動きから見て、明らかに介入によるものです。その時間以前に一瞬の下落が何度かありましたが、これはステルス介入と思われます。また、EBSなどにキリバン(150.00などの切りのいいレート)でオファーもしていたかもしれませんが、2000年代に入ってから銀行ディーラーの守秘義務契約は依然より厳格で、まず銀行から情報は漏れてきません。昔は日銀が、ブローカーやディーラーに、介入していると市場に伝えさせ、アナウンスメント効果を期待する介入もありました。コンプライアンス強化で、現在それができなくなったのは、財務省としては介入の手法のひとつを失ったことになります。介入している、と市場を怯えさせるには、自分で介入したと言うしかないからです。

ところで、USDJPYが目立って下落を開始したのは、22時少し前ぐらいからで、この時152円寸前から151円台前半まで下落しましたが、この時間の下落は介入によるものではないと思います。その時、WSJ紙のNick Timiraos氏が、11月のFOMCで利上げ幅は75bpになるだろうが、この会合でその後の利上げ幅の縮小が話し合われるという観測記事をだしました。この記事に米債は敏感に反応し、米金利は下落に転じました。この米金利の上昇から下落への動きは、木曜日と同様に為替相場に大きく影響しました。USDJPYだけでなく、EURUSDやAUDUSDも大きく反発しました。

政府日銀の介入は、朝方4時ぐらいまで続いていたようです。ツイッターにも書きましたが、金曜日午後のNYの薄いマーケットでUSD売りすることで、より一層介入の効果を高めようとしたのではないかと思います。昨日の朝の配信で、介入があるとしたら今日、そして夕方の本編で、日中の介入がなかったので、これから来月のFOMCまでは大規模介入はない、としましたが、見事にウラをかかれました。ただ、昨晩152円近くまで上昇しなければ、大規模介入はなかったかも知れません。米金利が下落に転じたことも、介入を決定する要素のひとつになったと思います。

そして、月曜日の東京市場ですが、私はダメ押しの大規模介入をもう一度東京市場でする可能性があると思っています。今回の介入を東京が真夜中のNY市場で行ったことで、安いUSDを買うチャンスは本邦勢より海外勢に多くありました。本邦の安いUSDを買いたい輸入などの実需筋にとって、指値買い注文をしていないかぎり、NY市場での介入はあまり恩恵がありません。今回の介入について財務相が有無を明確にコメントしないのは、なぜ海
外市場で、という不満が起こることに配慮している一面もあると思います。

もし月曜日の市場のUSD買い意欲が強く、すぐに150円方向に戻す動きをするのであれば、東京市場で大規模な介入を再び行う可能性は高まると思います。特定の受益者に税金を使うことになるので、財務省は大きな声では言えないでしょうが、高いUSDに不満を持つ実需筋の不満を和らげ、安いUSDを買わせることも、介入の大きな目的のひとつなのです。昔、超円高だった時、私が話した財務官僚はUSD買い介入によって、輸出業者に救いの手を差しのべることに使命感を持っていました。今でもその感覚は財務省にあると思います。』

最後のほうはちょっと余計でしたが、そのまま掲載しました。昨年財務省は9月と10月に実弾介入を実施し、特に10月の介入は結果的に昨年の円安の流れを変えるものとなって、財務省の介入手法の巧みさが一時話題になりました。で、結論ですが、今回も何か米金利が低下するきっかけで介入を実施するのではないかと私は考えています。その時の市場状況が一番重要だとは思いますが、米政府機関閉鎖回避とか何か米金利を低下させる指標発表とか、そういった材料に乗せて円買い介入を行う可能性は高いと考えています。

と書いておいて、今日の午後にも介入が実施されたら、笑ってください。

3年目に突入したGLAFXは来月にバージョンアップを行います。より明解にそしてシンプルにエントリーとエグジットができる内容にします。今後ともよろしくお願いいたします。