市場の予想通り、先週米利上げが行われました。9年半ぶりでありますが、大分時間をかけて市場に浸透してきただけに、無風通過というか、決定直後米株の上昇で見られるように、「一件落着」ということでマーケットに歓迎されたと言えます。

米利上げ周期に入り、影響は寧ろこれからであるが、市場における反応、短期、中期、そして長期はともに異なってくるでしょう。換言すれば、マクロ経済要素として最高序列に位置する米利上げ周期入り、幾ら強調してもその重要さが過言ではないから、安易に片付けるものではありません。従って、現時点、米利上げ云々といった性急の評論、結論はどうであれ、距離をおいたほうがよいかと思います。

これからの米利上げ周期について、今回FOMCの声明文を読む限り、17名FOMCメンバーの中間予想として、来年年末まで米金利が1.375%まで上昇する余地があり、実現されると、来年4回の利上げあり、毎回0.25の利上げが予想されますが、現在マーケットのレート、そこまでの利上げ余地を織り込んでいるかどうかは不透明だと思います。というのが、来年利上げ余地自体が不透明で、状況は流動的だと思われます。

また、利上げ周期入りとはいえ、ドル高が継続されるかどうかについて、ウォール街の見方は分かれるところです。ドル高見通しの最右翼、あのゴールドマンサックスに言わすと、今回の利上げ、2008年以来の大規模QEを終焉させた上、金利差の拡大傾向もあって、ドル高がこれからも継続され、2017年年末までまだ17%の上昇余地あり、今はドルの買い子好機だと主張されています。

反面、クレディ・スイスを始め、多くの銀行系アナリストはドル高継続論調に懐疑的見方を示しました。主な根拠は過去の値動きです。過去5回の利上げ周期入り局面では、利上げ後ドル高ではなくドル安に振れ、平均して利上げ開始後の三カ月以内、ドルは10%安のパフォーメンスを記録していたからです。

その上、ユーロ/ドルが利上げ前にポジションの調整があったものの、なお不十分で、主要通貨対ドルのポジション、総じてドルのロング超が歴史的な高水準におるから、利上げが一旦実施されると、「うわさの買い、事実の利喰い」の動きに晒されやすいとBofA メリルリンチが警告を発しました。ファンダメンタルズよりもこういった市場の構造のほうが相場の反転を引き起こすリスクが高いと同行が主張しています。

このように、ウォール街の見方が分かれるところ、我々個人投資家が確信をもって一方通行の市況を想定しないほうがよいかと思われる一方、ウォール街の見方が分かれるだからこそ、安心感があるとも言えます。換言すれば、今のマーケット、至って正常でお付き合いしやすいかと思われます。

何故なら、金融市場における見通しや思惑、それぞれ違うのが当たり前で、ウォール街の見方割れも日常茶飯事です。寧ろ見方が高度一致、更に専門家と庶民の見方も高度一致していた場合が懸念されるべきだと思います。なぜなら、皆の思惑が合致しているほど思惑が外れるリスクが高いこと、歴史的な教訓も同理屈が教えてくれたからです。実例は枚挙に暇ないから、ここでは省くが、強調しておきたいのは、現在の状況、正常である以上、大きなサプライズ、忽ち起こる可能性が小さく、トレンドが維持され、緩やかに延長される公算が高いではないと思います。