黒田ラインの健在をしている。当然のように、すでに大きく割り込んだ以上、それは支持ラインではなく、抵抗ラインとして意識されるはずだ。実際、ドル/円は16日114.87までリバウンドしたものの、足許再度112円台へ反落、明らかに黒田ラインの存在を意識している値動きとなった。

皮肉にも同ライン、張本人の黒田日銀総裁が自ら破ったわけだから、現在クロダレジスタンスと呼ばれるのが相応しく、またすこし「恰好いい」かもしれない。なぜなら、クロダレジスタンスは中央銀行の失敗を象徴する言葉としてこれから歴史に残すかもしれないからだ。

もっとも、中央銀行の失敗は日銀に限ることではなく、世界範囲に発生しているから、2016年は中央銀行の総失敗によって幕挙げされ、また同失敗を引き続く形でマーケットの混迷を深めていくでしょう。最近金の上昇、世界範囲におけるリスクオフの結果と言える一方、本質的には中央銀行への不信がもっとも大きい背景になっているのでは。

事の始まりはやはり「問題児」の中国、昨年中国人民銀行(中央銀行)が人民元とドルのペッグ制を緩和しようとしたが、人民元安の観測が高まり、中国経済のハードランディング連想から株の暴落につながった。その後、中国株の急落で世界金融市場に強い衝撃を与えたことは周知の通り。

ECBはマイナス金利政策を推進した結果、EU圏銀行株の暴落をもたらし、銀行の収益を大きく浸食したことで政策本来の目的を果たしたとは言い固い。実際、マイナス金利でも国債が買われたから、資金の安全志向が一段刺激されたわけだから、中央銀行の思惑が外れることが証左されている。

満期まで持つと確実に損する債券を買う自体は愚かな行為と言えるが、債券価格が上昇さえ維持できれば(つまり、もっと愚かな投資家が出って来る限り)は買い手が出現し、また買い手の出現によって債券価格が上昇し、マイナスになった利回りが更にマイナス幅を拡大していく。これこそチキンレースだ。

チキンレースの後に入っていくのが日本国債だ。長期国債(10年もの)利回りもマイナスのゾーンに踏み込ませたのが日銀のマイナス金利付QQEだ。その結果、株式市場は暴落、円は急騰していたことも周知の通りだから、すくなく短期スパンでは、もっとも失敗した中央銀行だと言える。白黒がはっきりつけられた形で、市場は黒田総裁が主導した政策に不信任票を投じた。

では、世界の中央銀行と言われるFRBはどうなったかというと、二年間もかけて用意周到な利上げ準備を行ってきたかと思いきや、米国市場を含め、世界金融市場の混乱や米国経済指標の悪化で次の判断が難しくなり、米10年もの国債利回りも1.8%以下に沈み、年内利上げなしといった可能性を織り込んでいる模様だ。FRBの年内4回利上げといったシナリオ、市場に公然と嘲笑されているわけで、FRBの権威も下がる一方だ。

この意味では、2016年は中央銀行受難の年で、市場の行き先を予想するのもかなり難しい仕事であろう。マーケットの値動きと中央銀行政策のダイバージェンス、現在ほど鮮明になったことはないと言える。