ドル/円のリバウンド、現時点110以下留まり(注、今朝執筆時点)筆者の想定通りだと言える。即ち、ドルのリバウンドを予想していたロング筋が揃ってショートのスタンスに転じてきたから、ドル/円が却って安値を更新せず、一旦反騰してくるが、値幅が限定され、ベアトレンド自体、全く修正されない、これからもベアトレンドを推進する公算が高い、ということである。換言すれば、ドル/円は目下スピード調整におるが、下落トレンドが確実視される。

ところで、いろいろ評論をみていくと、ドル/円の下げ一服もあって、来週日銀会合にて量的緩和、或いはマイナス金利の更なる拡大といった観測が高まり、この前ショートスタンスに転じてきた「元ロング派」らの再転向が見られた。つまり、ドル/円が上昇すると見る評論家の方々がまた増えてきたから、またひとつのサインを点灯したと思う。

要するに、前回彼らの転向がドル/円の下げ一服をもたらしたとすれば、今回彼らの再転向がドル/円の下落再開を暗示するサインと受け取れる。同サインの正式な確認、日銀会合後になる見通しだが、ドル/円の弱いリバウンドに鑑み、日銀会合を待たずに確認される可能性もある。そのサインはほかならぬ、ドル/円の107.83割れだとみる。

同安値は今週の安値であり、月曜日付けた安値であったが、同安値が重要な意味合いをもつ。何しろ、月曜日の安値が窓を開けて下落して形成され、またG20にて米サイドから日本の相場介入をけん制したと伝われた後、マーケットが驚きをもって形成した安値だったから、同安値割れがあれば、ドル/円の下落再開が認定されるでしょう。

下値ターゲットについて、度々指摘してきた105/106といったメインターゲットを据え置けるが、場合によっては一時105関門割れもあり得るでしょう。何しろ、足許のリバウンド、スピード調整として次の下落モメンタムを貯蓄しているから、次のターゲットがオーバーして行ってもおかしくない。

筆者がもっとも大事にしてきたロジックといえば、「市場が材料の先に動き、材料が後に付いてくるもの」と挙げられる。この意味では、相場の値動きをもって後の材料を予知する場合もある。従って、仮にドル/円が日銀会合を待たずに安値トライする値動きになった場合、日銀会合自体、大した成果を出せないことが暗示されるかと思う。

ということは、一部市場関係者らの思惑、即ち今回熊本地震もあったから、日銀がより機敏に動き、マイナス金利を拡大させるだろうといった思惑が裏切られる可能性が大きいと思う。何しろ、熊本地震があったからこそ、日銀が動かないのではと考えられるからだ。

実際、マイナス金利が導入された後、日本の消費者心理が向上したばかりか、逆に悪化している。マイナス金利が高齢化社会の日本において、高齢者の恐怖心を高め、また金融機関の怒りを招いているから、下手すると、政局不安にも繋がりかねない。この上、今回の地震もあって、消費者心理が一段と暗くなっている最中、安易な判断を下せないかと思う。

強気の発言を繰り返す黒田総裁、前回マイナス金利導入時4名の理事(事実上半数)に反対された事実に鑑み、日銀内部でもその指導力が低下しているに違いないから、本当は心細いはずだ。一方、安倍政権内部もマイナス金利のマイナス効果を危惧する声が高まり、政府と日銀の蜜月、すでに終わりの始まりかと思われ、いくら黒田さんでも安易に動けないでしょう。

こういった認識、上昇に広がっていけば、上昇にドル売り/円買いに繋がっていくが、日銀動向に関する憶測が出やすい時期であるだけに、短期スパンでは反乱含みの展開になりやすいかと見る。実際、午後になって、ドル/円が109.33から急騰、再度110関門を突破した。「日銀、金融機関への貸出し気に理にもマイナス金利適用」との報道につられた値動きだと思う、真相はともかく、こういった値動きにも警戒せざるを得ない。但し、こういった材料があっても、ドル/円の戻り余地が限定される、という見方は不変、こういった報道があったからこそ、戻り売りの好機を提供してくれたと見る。前回記事にて提示した111円の節目前後がもっとも重要なレジスタンスゾーンといった認識も不変だ。