事前に米雇用統計を予測できる方はこの世にいないから、米雇用統計自体の良し悪しを推測できない。しかし、相場の反応をあらかじめ予想できるから、大まか以下のパターンが想定される。

1、米雇用統計がよく、ドルインデックスが上昇
2、米雇用統計が悪く、ドルインデックスが反落してくるが、安値を更新せずに済む。
3、米雇用統計がよく、ドルインデックスが下落
4、米雇用統計が悪く、ドルインデックスが上昇
5、米雇用統計が悪く、ドルインデックスが安値更新

もっとも想定されやすいのが、1と2のパターンではないかと思う。3と4のパターン、所謂完全の逆行であるが、可能性が低い気がする。

何故なら、米追加利上げ観測がなおくすぶるなか、FRBのタカ派でも経済指標次第と強調しているから、米雇用統計の良し悪しが結果的に追加利上げの有無を決定できなくても、目先市場センチメントを左右する効果を十分発揮できる。そして、5番の可能性、否定できないものの、前記テクニカルのシグナルに鑑み、確率が低下しているのではと思う。

ドルインデックスの底打ち、外貨ごとにサインが違ってくるが、足許豪ドル/ドルの反転サインがもっとも強烈であろう。豪州の「予想外」の利下げもあって、マーケットがややサプライズをもって反応した様子で、目先豪ドルの反落トレンドが鮮明である。

豪ドルの利下げ可能性、筆者はずっと指摘してきた。その理由はほかならず、豪ドルの大幅リバウンドが進行していたからだ。豪州中銀、豪ドル安を隠さず強く志向してきたから、豪ドル高の進行だけでも利下げの根拠になるわけで、分かりやすかったとも言える。

その他の主要通貨ペアでは、ポンド/ドルはリバーサル・ハイ、即ちザラ場にて高値更新したものの、終値が前日より下に引き、反転のサインを灯していた。

ユーロ/ドルはポンド/ドルは豪ドル/ドルやポンド/ドルほどの強烈ではなかったものの、3日の罫線、所謂「流れ星」のサインを点灯、当面の頭打ちを示唆していた。

当然のように、ドル/円も3日にて105.55の安値を更新した後、保ち合いの市況に入った。105円台のターゲットとは、筆者がずっと指摘してきたので、全く想定範囲であるが、GW期間中円高傾向が例年ほど強くなかったのではと一部読者様が疑問を呈しているかもしれない。

この疑問を答えるには、近年GW期間前後におけるドル/円のパフォーマンスを統計してみればできる。以下は2008年からの統計:

2008年、GM中動かず、直後三日間 3円程度の円高

2009年  10日間5円程度の円高

2010年 2日間 7円程度の円高

2011年  8日間 3円程度の円高

2012年 6日間 3円程度の円高

2013年  9日間2円程度の円安

2014年 4日間 1円程度の円高

2015年  4日間 3円程度の円安

こういった統計でみると、GW前後における円高の傾向が強く、また3円程度の円高がもっとも発生しやすい。但し、今年に限って言えば、4月28日からすでに6円程度の円高が観察されているから、GW期間前後という全体条件でいえば、もう十分円高になったと言える。このためか、GWの三日中、寧ろ円安方向に振れているので、円高の値幅を幾分消している。ドルインデックスの底打ちサインと整合的に考えれば、よりお分かりいただけるではないかと思う。

もっとも、4月28日からドル/円の急落、日銀の「有言不実行」が原因であったから、安易に修正されない。このため、仮に今晩米雇用統計が極めて良好だとしても、ドル高は主に円以外の外貨安に作用し、円安が限定的だと思う。この結論、以下の二つの視点をもって解釈されよう。
1、外貨安によるクロス円相場における円高圧力がドル/円に波及してくる可能性
2、前回コラムの指摘通り、日銀の「情報漏れ作戦」が裏目に出たから、これから相場の報復に遭いやすい。

詳細はまた次回に譲るが、円高トレンドがなお継続されることだけを強調しておきたい。市況は如何に。