【22年2月26日】今週の木曜日は、ロシアのウクライナ侵攻が開始され、FXもEURを中心とした荒れた相場になりました。戦争ネタでトレードするのは気持ちの良いものではありませんが、私はFXでトレードすることを仕事としているので、ウクライナ情勢についても、あくまでも相場を動かすひとつの材料として捉え、純粋にトレードについてだけ書いていきます。

今回ロシアのウクライナ侵攻に伴った、24日木曜日の相場ですが、結果論ですがこれは最近の大きな相場にはちがいありませんが、よく言う大相場とはちょっとちがうと思いました、クロス円などは金曜日までに往って来いの相場になりましたが、それはあまり関係ありません。私が注目したことは、

  1. 時間をかけて値幅をだしている。しかもその値幅は限定されている。
  2. パニックに陥ることなく下落している。FX各社のスプレッドもほとんどの通貨ペアで通常と変わりなし。
  3. 市場が何を材料にして売買しているかが明らかで、相場の上下動の理由を市場参加者が把握できていた。

下のチャートは比較的値幅がでたEURJPYの時間足です。ロシアのウクライナ侵攻の懸念が再燃し、米株式市場が急落に転じた24日午前0時からの24時間を枠で囲っています。

EURJPY1H

上のチャートで見られるように、24日午前0時を起点として、最安値の127.92をつけるまでに、20時間ほどかかっており、しかもその値幅は2円60銭ほどしかありません。また、実際のウクライナ侵攻が報じられた1時間でも下落したのは80銭ほどです。これは大きめの相場であることは間違いありませんが、大相場と呼べるような相場ではありません。

なぜこのような大きな事件のわりに、落ち着いた動きになったのか。ウクライナに限定された戦争で、NATO対ロシアの全面的な戦争に展開しないなど、色々と言われていますが、私が考える最大の理由は、マーケットがこの材料について、事前によく準備ができていたこと、なのだと思います。ロシアのウクライナ侵攻については、前もって米国大統領が繰り返し警告していました。これはロシアのウクライナ侵攻が現実となるかという問題は別にして、可能性が高いということで、マーケットが前もって身構えることができました。マーケットが強く反応する時というのは、まったく予想もしていなかったことが、短期間で起こることです。発生が時間的に突然であればあるほど、マーケットは大きく反応します。マーケット全体が、何が起こっているかを把握するのに時間がかかるからです。これによりマーケットはパニックに陥いり、いわゆる大相場が発生します。

今回の相場は、詳細については把握できないにしろ、事象全体的には何が起こっているのかが、わかる相場でした。例えばFOMCや米雇用統計のように、相場が荒れることが事前にわかりました。なのでGLAFXの本編も、通常の配信とはせず、臨時配信としたのです。トレーダーの中には、ファンダメンタルズは一切無視で、テクニカル分析だけでトレードする人も多くいます。そういった人たちが、このような事態ではテクニカル分析は効かない、と判断して今回の相場に手を出さないというのは、大いに理解できます。正しい判断だと思います。ただ、今回事態の緊迫化でEURが売られリスクオフのシナリオを考えられるトレーダーが、ただ怖いので手を出さないという理由だけで、手を出さないというのはもったいないと思います。何も根拠が持てないのであれば、ギャンブルになってしまいますが、根拠を持って相場に入るのであれば、それはギャンブルとはちがうと思います。ただ、通常のマーケットではないので、細心の注意は必要です。

一番大切なのは、ロットの調整です。怖くて入れないという人は、通常のロット数で大きな相場に入るイメージが先に頭に入っているのではないでしょうか。例えば10万通貨で普段トレードしている人が、今回のような相場で同じロットで入れば、数10万円が簡単にとんでいく可能性があります。でも、儲けは二の次でいい。相場観があるのでぜひ入ってみたい、と考えて千ロットから1万ロットの単位までポジションを落としてトレードしたらどうでしょうか。千ロットなら1000pipsやられたとしても1万円です。大きな相場では値幅が大きくでます。ロットは小さくてもとれればpipps数は大きくなりますし、終わってみたら意外と儲けられたな、という結果になるかも知れません。負けても損失は小さく、大きな相場に参戦した経験は積むことができます。私はトレード根拠があるのであれば、できるだけ参加したほうが良いと思っています。

ということで、今回の相場は大相場ではなく、大きめの相場でした。以前私はGLAFX読者向けに、大相場の対処法についてのレポートを配信したことがありましたが、今回はその抜粋を以下に掲載しておきます。2019年1月のいわゆるフラッシュクラッシュを題材に、パニック相場に対する考え方と対処法について書いてあります。今回の相場とはちがう性質の相場についてになりますが、みなさんの参考になればうれしく思います。

 

パニック相場でもエントリーしていく5つの心構え

  1. 必ず目の前の画面で相場が見られる環境で取引する。
  2. ロスカットのオーダーはださない。
  3. エントリーと手仕舞いは、必ず指値注文でおこなう。
  4. 基本はパニックが起こっている方向に対しての逆張りトレード。
  5. チャートを確認する必要はないが、どれだけ値幅をだしているかは、頭に入れておく。

1は荒れた相場なので、30~50pipsのスプレッドのプライスが頻繁に点滅を繰り返して、値が動くことになります。このような状況では、必ずプライスアクションを絶えず把握できる環境に身を置いていることが大事です。スマホもあまり薦められません。PCの前に座ってトレードするのが望ましいと思います。

2はロスカットのオーダーはださない。ロスカットをしないということではありません。

荒れ相場の環境では、ストップを置けばどんなレートで約定されるかわかりません。少なくとも相場が落ち着いて、スプレッドが縮まるまでロスカットはすべきではありません。いつも30pipsで必ずロスカットをしろ、と言っている私が変なことを言うと思われるかも知れませんが、荒れ相場に臨む時は、ロスカットはしない気概でのぞんでください。

ではロスカットをせず、損失がどんどん膨らんだらどうするのか、とお考えになるかも知れません。みなさんは普段どれくらいのロットで取引されているでしょうか。人それぞれちがうと思いますが、例えばドル円1取引で1円アゲインストになっても、立ち直りにまったく問題がないロット数はあると思います。極端な話をすれば、普段1円やられても大丈夫なロット数を10分の1まで下げて、10円やられても大丈夫なロット数にしてみてください。

普段動かない市場に慣れていて、いったん相場が荒れると誰もが恐怖をおぼえ、ひるみます。でもそこで発想を転換して、普段の10分の1のポジションサイズにしてみるのです。よく、落ちるナイフはつかむな、と言われますが、野球のグラブをはめてつかめば怪我はしないでしょう。大相場、荒れ相場では、まず目先でいくら儲けられるかと考えると、リスクのことが頭をよぎってなかなか入っていくことができません。利益優先でなく、こんな滅多にない相場なのだから、絶対入って経験値をあげよう。荒れ相場の市場参加者になって、学習してやろうという気持ちで入るのです。いつもと違う、緊迫したマーケットへのエントリーは、滅多に経験できることではありません。できれば入ってほしいと思います。

3は、必ず指値注文でトレードするということですが、スプレッドが開いて、しかも高速でレートが変化する荒れ相場では、成り行きでレートをヒットしたところで、まず約定されません。そこで、リアルタイムのだいたいのレートの居場所がわかったら、そこから少し離れたところに売りオーダーか買いオーダーを置くのです。荒れている中で、今相場は落ちているのかそれとも上昇しているのかを、把握することも重要です。

相場の方向を把握したら、市場が逃げたがっている方向に対して、4に書いてある通り、逆張りをします。なりふり構わずマーケットが売りたがっていたら買ってやり、必死でレートに関係なく買いたがっていれば売ってやるのです。みんながえーっ、こんなところまで、というところを、目をつぶって逆張りしてやるのがコツです。そういった投げ売りや買いがいったん小休止に入ったり、終了したりすれば、次の段階では、様子を見ていて実は買いたかった参加者、売りたかった参加者が登場して、反発が始まります。そしてそれを見てまた新たな買いや売りが入ってくるのです。相場とはいつもそういった流れの繰り返しです。

5の値幅ですが、これを頭に入れて荒れ相場に入ると、かなり気持ちが楽になります。

常識的な値幅を冷静にトレード根拠にすることは、荒れ相場では心強い味方になると思います。例えばこのフラッシュクラッシュの前年の2018年の年間値幅は、10円弱でした。その値幅の半分をたったの1時間程度の時間でやってしまったのです。ドル円の値幅が1時間程度で5円もでるなど、まったく異常な状態です。そう考えれば、105円近辺で、通常の10分の1程度のロットを指値で逆張り買いすることなど、何でもないことです。荒れ相場で過去のチャートポイントなど見ているヒマはないし、あったとしてもパニックに陥っているマーケットに、テクニカル分析は無意味です。先に箇条書きした大相場のリストで、1998年10月のものは、ドル円が2日連続で1日10円下落しました。そういったことの起きそうな値幅が、当時は前触れとしてでていましたから、その時はあり得たのだと思うのですが、現在のドル円で1日5円値幅がでたとしたら、必ずその動きに対して調整が起きると思います。荒れ相場では、目の前の値動きに左右されず、冷静にそういった俯瞰的な立場で相場を見ることが重要です。