【22年3月8日】ロシアのウクライナ侵攻が止まらず、世界情勢は深刻化を増しています。地政学的にも経済的にもウクライナとロシアに密接に関係するEUR売りが鮮明になっています。一方で資源国であり、ヨーロッパから遠く離れたオーストラリアには資金が流入し、結果的にEURAUDにおいて、EUR売りAUD買いの大きなフローが発生して、EURAUDは2月7日からの4週間で1650pips下落しました。今日のブログは、この動きの背景と今後考えられるシナリオについて書きたいと思います。

EURAUD日足

ウクライナ情勢が深刻化した時に、EURが売られその受け皿としてAUDが買われるという発想は、市場参加者の多くが思いつく発想だと思いますが、果たしてリアルマネーは本当にEURからAUDに流れたのでしょうか。EURから資本が流出するというのは、あったと思います。ただ投機筋の資金もかなりEURからAUDに流れたと思います。というのも、下のチャートで見られるように、IMMのAUDUSDのポジションは売り越しが続いています。

imm

上の4つのチャートのうちの右下がAUDUSDのチャートで、緑色の棒グラフがIMMのAUDUSDのポジションです。これは週足で、去年の6月からずっとIMMはAUDUSDをショートしていることがわかります。ちなみに、左上がドル円で右上がEURUSD。そして左下がGBPUSDのIMMのポジションになります。USDJPYはずっと買い越しが続いています。EURUSDはピークから減少していますが、EURロングになっています。

IMMがすべてマーケットのポジションを反映しているとは言えませんが、参考にはなると思います。AUDUSDのショートの水準は依然として高いですが、先週4日の金曜日から昨日7日の月曜日のAUDUSDの急騰を見ると、このチャートには反映されていませんが、おそらくAUDのショートは減少していると思います。

こうしてみてみると、EURAUDは全体的マーケットがロングだった可能性があり、ここ1か月の下落はロングの投げが大きかった可能性があります。ただそれだけではない可能性もあります。大きな資本移動が行われている可能性も否定できないのです。実は欧州勢を中心とした、世界中のEURAUDの取引はかなり大規模です。2008年のリーマンショックの時、リスク回避でAUDが大きく売られる状況がありました。しかしその後マーケットが落ち着いてAUDに資金が戻っていきました。リスク回避でUSDに集まった資金はEURには流れずAUDに流れました。結果としてEURAUDは3年間で9500pips下落しました。

月足

昨日EURAUDはアジアで1.4560近辺の安値をつけ、その後NY市場で1.4890近辺まで反発しました。米株が激しく売られ、米金利が上昇し、リスクオフでAUDUSDも久しぶりに下落に転じました。今後リスクオフでUSDに資金が集中してAUDに流入しないとなると、EURAUDの下落も緩やかになる可能性もありますが、EURが弱い状況が続くかぎり、EURAUDの下落継続は止まらないと思います。EURAUDは3つの大きなゾーンに分かれて動くことが多いです。下の週足は私が考えるEURAUDの値動きパターンを表しています。

月足

1番上のAラインは1.7600近辺ですが、これより上でEURAUDが推移することは滅多にないです。リーマンショックや、コロナショックなど何か突発的なことが起こった時だけで、ほとんどは短時間で下落することが多いです。一番長く滞在するゾーンは、AとBの間の1.76から1.55のゾーンか、BとCの間の1.55から1.36の間です。私は今回の下落によって、EURAUDのトレードゾーンが後者のゾーンにシフトしたのではないかと考えています。時間をかけて1.36台を目指して下落していくのでは、と考えています。

ところで、今回のように戻りらしい戻りもなく下落していくEURAUDのような相場に、どうやって乗っていったらよいのでしょうか。私は安値を目をつぶって売っていくしか方法はなかったと思います。こうした相場は、1980年代のUSDJPYでよく起こりました。1ドル200円台から下落していった相場です。その頃の銀行ディーラーは、手書きのチャートとロイター端末に表示される為替レートとスピーカーから流れるブローカーの興奮した声を頼りに、目をつぶって「ユアーズ(売った)」とマイクに向かって叫びながらUSDJPYを売っていきました。しかし今考えれば特異な相場環境でした。こんなやり方は現在の相場では通用しません。

1980年代のドル円ディーラーは、現在個人投資家でも容易に手に入るトレードツールや分析ツールもなく、極端な話、度胸だけでトレードしていました。逆に言えば度胸さえあればなんでもよかったのです(笑) 現在個人でブログやユーチューブで活躍しているトレーダーでも、今回のEURAUDのような相場は、水平線もトレンドラインもダウ理論もエリオットウェーブもオシレーターも何も役に立たず、指をくわえて見ているほかなかったのではないでしょうか。でも私はそれでいいんだと思います。こんな相場は、10年間でもそんなに起こる相場ではないです。こんな相場で1度や2度飛び乗りのトレードをして利益をあげるよりも、通常の相場で自分が確立したやり方でじっくり勝っていくほうが、生き残っていく王道だと思います。1度や2度の成功例が頭に離れず、飛び乗りを繰り返して儲けさせてくれるほど、相場はあまくありません。今回は乗れなくてよし、と考えてよかった相場だと考えています。ただ、私にとっては、1980年代のトレードの血が騒ぐ大きな相場でした。

2月7日以来、ほとんど戻りらしい戻りがなく、エントリーが難しかったEURAUDの4時間足

4h