【22年7月8日】EURUSDが今週1.0350近辺のサポートを下抜けし、年来安値を更新し1.01台まで下落しています。前回USDJPYが1998年にどのような状況で、136円台に突入したかをチャートを見ながら解説しましたが、今回は同じことをEURUSDでやってみようと思います。

ところでEURが市場で取引を開始したのは、1999年1月からです。調べてみると現在EURは、EU内の19か国で導入されているそうです。それ以前はどうであったかというと、19か国はそれぞれ自国通貨を流通させていました。EURの前身としてECU(欧州通貨単位)というものが取引されていましたが、これを基にして各国の通貨をEURに交換するレートを決めて、通貨統合が実行されました。実際にEUR紙幣が流通を開始したのは2002年からということです。

話は例によってそれますが、現在SNSなどを見ていると、スイスフランのことをFXトレーダーたちはフランと呼んでいるようです。スイスフラン円のことを、フラン円と言ったりしているようですが、このEURの通貨統合前からFXをしている人たちは、私も含めて誰もスイスフランをフランと略して呼ぶことはないと思います。我々は通常フランではなく、スイスと呼んでいました。なぜなら通貨統合前には、フランスもフレンチフランであり、ベルギーもベルギーフランだったからです。EURによって、フレンチフランもベルギーフランも姿を消しました。多くのトレーダーは、EUR導入以前はドイツマルクを主にトレードしていましたが、欧州のトレーダーたちはこういったフレンチフランやベルギーフラン、オーストリアシリング、ダッチギルダーなど、多数の通貨を取引しており、こういった通貨が消滅することは、彼らのトレードする通貨ペアの減少を意味するわけで、職を失うことを心配していたトレーダーもたくさんいました。

EUR前のトレーダーにとっては、USDDEM(米ドルドイツマルク)をトレードすることが王道でしたが、ドイツマルクも姿を消し、今ではEURUSDが世界で一番取引される通貨ペアとなりました。それでは1999年1月から今まで、EURUSDはどういった値動きをしてきたのか、月足チャートで見てみることにします。

1999年1月、EURUSDは1.17台で颯爽とデビューを果たしましたが、その後下落が続き、1年後にはパリティ、つまり1.0000を割り込んでいます。当初はカッコよかったものの、多くの国の通貨を統合した後の不都合や混乱がたくさん出てきて、メッキが剥がれた状態だったと思います。2000年10月には0.8230近辺の最安値をつけ、その後も低迷が続き、EURUSDがパリティ割れをしていた期間は3年に及びました。エコノミストたちの間でも、問題の根が深いというコメントが多く、EURに対して悲観的だった記憶があります。ちなみにこの月足チャートでは、EUR発足の1999年以前の値動きも示されていますが、これはECUあるいはUSDDEMの値動きをEURUSDに引き直して、このFX業者が提供しているものだと思います。

こうしてみると、現在市場関係者がEURUSDのパリティ突入を話題にしていますが、まあそれほど大騒ぎする事柄ではないです。1999年当時も、1.0000を割り込むと大きく売りが出る、などと警戒する声が多く聞かれましたが、私の記憶では大したことはなかったと思います。普通に大台が割れただけだったと記憶しています。0.85台だった頃に、大口の欧州投資家が静かにEURを買っている、という噂を聞きました。USDの実力と比べて、EURのパリティ割れが長く続くと思っていない、というような理由だったと記憶していますが、まさにその通りにだったと思います。それからいつだったかは忘れましたが、ECBはこのEUR安でEURの買い介入を実施しています。市場関係者が、まず介入はないだろうと考えていたタイミングでの買い介入で、マーケットに相当インパクトがあったことをおぼえています。現在のインフレ懸念で、ECBは過度のEUR安を嫌うはずです。今後口先介入を含め、何か対策を講じてくる可能性はあると思います。

その後EURUSDは1.00を回復して、2007年まで順調に上昇を続けました。2008年の7月には1.6030台の最高値を記録、EURJPYもその時期に170円直前を記録しています。今だから言えますが、私はこの頃に、銀行に内緒で個人のFXを始めて、ロスカットを170.00に置いてEURJPYをショートにしたことがありました。まだ始めたばかりで、170円がつかなくてもスプレッドが広ければ170.00が約定されることを知りませんでした。銀行間のオーダー執行ではあり得ないことだったからです。確か170.02ぐらいの歴史的な場外高値を買わされた記憶があります。このことを私より一回り上のSさんという先輩トレーダーに話したら、そのことを彼がFX会社で書いているブログに面白おかしく紹介したことがありました。

また話がそれてしまいました。1.60に達したEURUSDはその後のリーマンショックによって、急速に下落しています。その後は1.50台と1.40台までの反発はあったものの、上値を切り下げながらEURUSDは下落傾向となりました。2014年から当時のドラギECB総裁が、私を信じなさいと言って金融緩和をしっかりと実行したことが効きました。2014年のドラギ総裁にはマーケットは信頼を寄せていましたが、2015年にEURが1.05台にまで達すると、ちょっと優柔不断な発言が増えてきました。しかし、現在のラガルド総裁に比べれば、かなりマーケットにとっては理解しやすい総裁だったと思います。現在の総裁はハト派と思っていたらブログで急に利上げを示唆したり、話を聞いていてもどういうスタンスなのかよくわからないことが多いです。まあEU内の国によって状況が違うので、インフレ対策で金融引き締めを行うにしろ、足並みを揃えるのが難しいのだろうということは理解できます。

ということで、FRBは利上げ継続、ECBも追随するにしろ大幅な利上げは難しい、ということになると、やはりEURUSDはパリティに向かいそうです。GLAFXでも今後EURの売りを狙う局面が増えてくると思います。今後の配信に期待してください。

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