【22年8月8日】USDJPYの大相場が続いています。前回のブログで予想した通り、USDJPYはFOMC後に調整下落局面に入りました。そして先週は米利上げ減速の期待感と、ペロシ米下院議長の台湾訪問による米中緊張のリスクオフで、FOMC前の高値139.40近辺から実に9円幅の下落を見せて、130.40近辺まで下落しました。その後はインフレを懸念するFRB理事の発言や中国の軍事演習でのミサイル発射などを材料に、132円台から134円台の大きな値幅で、売り買い綱引き状態となりました。夏の休暇シーズンで、このまま132-134円中心のレンジ相場で収束していくのかと思われましたが、先週金曜日の雇用統計で強い数字が発表され、労働市場の過熱から次回のFOMCでの75bpの利上げを織り込み、JPY買いで攻めていた投機筋は総崩れ状態で、USDJPYは135円台半ばまで上伸しています。今日のブログは、これら一連の激しい値動きから、今後USDJPYはどう展開していくのかについて、書いていこうと思います。

まずは日足で全体像を見ていきましょう。USDJPYが伸ばしてきた上値を基にチャネルラインを引いてみると、上図のような感じになります。3月から7月まで、何度か調整下落を起こしながら、順調に上昇してきた印象です。下落幅はすべて5円以内に収まっていましたが、今回はわずか3週間足らずで、9円もの下落を見せました。今回の下落過程でトレーダーが一番注目した点は、チャート上の131.20-50近辺のサポートゾーンでした。このあたりは、4月下旬と5月上旬にレジスタンスとして機能していた優秀なゾーンで、ここが上抜けた後USDJPYは135円まで上昇し、その後スイス中銀が利上げした時に、ロールリバーサルが確認され、サポートとして機能したゾーンです。また、高値139.39をつける前の直近の押し安値としても認識していたトレーダーが多く、ここが実体ベースで下抜けすると日足ベースでの上昇局面が終わり、5月下旬につけた126円台の安値も視野に入るという、重要な局面でした。

結果的には、このサポートゾーンは一時下抜けて130.39の安値をつけました。FOMC後のパウエル議長のややハト派的発言と、その後の弱い経済指標などで米金利が下落に転じていたところへ、ペロシ米下院議長の台湾訪問で、米中関係が一挙に緊迫したのが下落の原因でした。しかし、ペロシ氏の台湾到着とともに、この材料での織り込みが終了して買い戻しが起こり、またFRB理事が金利低下をけん制する発言も報道されて、結局この日のNY市場のUSDJPYは130円台から133円台まで大きく反発して引けました。私は地理的に台湾が近いこともあり、この台湾情勢緊迫のリスクオフとして円が買われることに、疑問を持っていましたが、おそらくペロシ氏の台湾訪問のイベントがなければ、USDJPYが131円を割ることはなかったのではないかと考えています。いずれにせよ、131円の下抜けは、日足ロウソク足では下ヒゲで表されることとなり、実体ベースでは下抜けしていないのではないかと、ここはトレーダーによって意見が分かれることになると思います。

日足ベースで、USDJPYの上昇トレンドは継続か終了か、という問題はその後の値動きを見ていけばいいわけで、トレード上あまりこだわる必要はないと思っています。上の4時間足で、FOMC後から130.39の安値をつけるまでの値動きに注目してほしいのですが、24本目の足で急反発するまでの23本足のうち、実に陰線が20本に対して陽線はたったの3本。いかに強烈な下落だったかがわかります。短期の投機筋は、FOMC前にPMIの悪化でつけた時の安値である135円半ばを下抜けした時には、完全にUSDJPYのロングを投げ、さらに134円台前半からはUSDJPYのショートに転じたトレーダーも多かったと思います。

今後のUSDJPYですが、①日足では上昇トレンドが終了したかは判明しないままに、急反発に転じたこと、②4時間足の134.60近辺の戻り高値を実勢レートが上回り、4時間足ベースでは下落トレンドが終了していること、③米国の労働市場は依然として過熱していることが確認され、FRBは経済よりもインフレ抑制を優先させて大幅な利上げを継続させる可能性が高いこと、④日銀は超低金利政策は継続し、日本の輸入物価の上昇と貿易赤字により、ファンダメンタルズでUSDJPYが継続的に下落していくことは当面考えにくい、といった理由で、前回のブログで書いたパターンCによる調整終了後の上昇がメインシナリオとなります。

USDJPYは130.39で底打ちした後、415pips反発して134.55近辺まで上昇し、その後132.52近辺まで下落しています。ここからの上昇が、前回同様に415pipsほど上昇すると考えれば、当面の目標は136.65-70あたりになります。この136.40-70近辺というのは、USDJPYが最高値をつける前の押し安値付近でもあり、6月下旬のレンジ相場の高値近辺にもあたる、重要なレジスタンスゾーンで、順当な上昇目標になると思います。一方下値の目途ですが、先週金曜日に上抜けした134.20-60あたりが直近の重要サポートで、その下となると132.60-133.00あたりと思われますが、よほどUSD売りの材料が出ない限り、今後は133円を割れるのは難しいと思います。

こうして考えていくと、133.50-136.50のレンジ相場から次第に上値下値を切り上げて、上昇に向かうというのがメインシナリオになると思います。ただ、日足の戻り高値でかつFOMC時の高値である137.50を上抜けしていくには、相当の時間とエネルギーを必要とすると思います。ここを上抜けると再び上昇トレンド再開となると思われますが、次回のFOMCまでもまだCPIなど重要な指標もあり、今月末にはジャクソンホール会議もあるので、早くても来月以降の話になると思います。