パリテロでリスクオフの動きが広げなかったが、FOMC議事録が公開された後、逆に小ドル/円が反落しまた。相場は理外の理と言われますから、今更驚くものではなかろう。

もっとも、フランス版9.11と言われる今回のパリテロに、金融市場が学習機能を動かし、冷静に反応していること自体、納得できる節が多いです。まず、確かに犠牲者人数が多かったですが、9.11に匹敵するほど金融、経済に忽ち大きなダメージを与えたかというと、そうではないといった判断ができます。次に、テロで景気悪化の兆しがあれば、すでにQE拡大や更なる利下げの余地を表明したECBが早期行動する、といった可能性も浮上、ユーロ安に作用する上、株式市場の支えになっています。

結局リスクオフかどうかは株式市場次第、こういった思惑があったか、テロ以降フランス株式市場をはじめ、EU株式市場は総じて堅調に推進してきます。従って、リスクオフの円買いに繋がらなかったことも自然な成り行きで、ユーロ安のみが反応したことにもよく納得できます。ECB政策以外、基軸通貨でないユーロが自身の悲劇から「恩恵」を受けるとは考えにくいからです。

こういった話、9.11後ドルのパフォーマンスと比較しないとわからないかと思います。2001年9.11当日、ドルインデックスが1.6%安を記録したが、その後反発し、2002年1月まで上昇していていました。言ってみれば、すくなくとも3、4月間、ドルは真のリスク回避先と見做され、テロを受けたにも関わらずこういったパフォーマンスを発揮できたのは他ならぬ、基軸通貨だからこそ持つ力の表れです。当然のように、ユーロは基軸通貨ではないから、こういった力を持たず、テロ事件やこれからのリスクに鑑み、安全資産どころかリスク資産に転落したと言えるでしょう。故に、ユーロ安続く公算が大きいと見ています。

一方、FOMC議事録が発表された後、ユーロ/ドルの切り返しが見られたように、目先ドル高のスピード調整が見られます。テクニカルのスピード調整以外、市場焦点のシフトが主要原因かと思われます。

12月利上げ自体が足許ドルのレートに織り込まれており、市場は利上げ自体より利上げ再開後のプロセスに注意し始まったと言えます。換言すれば、今回のFOMC議事録、利上げ後のステップに慎重な見方が示されたからドルロング筋の利益確定をもたらし、2016年米FRBが何回利上げできるかは早くも市場関係者論争のポイントとなり、FOMC議事録に示された慎重な見方に一部市場関係者らの失望を誘ったわけです。

しかし、テクニカル派にしてもファンダメンタルズ派にしても、ドル高トレンドの継続に異議を唱える方が少なく、多数派の見方はなおドル高に傾いています。筆者もその一人で、特にユーロ/ドルについて、やはり引き続き下値リスクを警戒していくのが筋ではないかと思います。メインターゲットのパリティ、3月安値割れがあれば現実になってくるかと見ています。