「日米金利差拡大からのドル高円安」という言葉は、ドル/円の上昇を解説するにあたり、マーケットコメントなどでよく使われる言葉です。

事実、今回も、日本時間1月27日の早朝、パウエルFRB議長が、3月の利上げを示唆したことで、米金利上昇による日米の金利差拡大見通しから、ドル/円が強烈に買われました。

ただし、気をつけなくてはならないのは、この日米金利差拡大という論法は、あくまでも投機筋のロジックであるということです。

投機筋が、たとえばドル買い円売りをするのは、日米の金利差が今後拡大するだろうから、今後ドルが上がり円が下がると先読みして、ポジションを張っているのであって、実際に大口投資家が金利差拡大だからドルを買って円を売るという事実は二の次です。

ですから、このロジックによって、投機筋のドル買い円売りポジションが膨れ上がれば、そのあとは、その自分の重みに耐えかねて反落するということが起こります。

ここが、これまでも申し上げてきましたように、買えば利食いか損切りのために売らねばならない、あるいは売れば利食いか損切りのために買わねばならない、投機筋の宿命です。

では、本当に日米金利差拡大で、大口投資家のドル買い円売りが起きるのでしょうか。

こんな例があります。

昨年の1月から3月に掛けて、米長期金利が上昇して、ドル/円も実際8円ぐらい上昇したことがありました。

しかし、2月から3月にかけて、日本の機関投資家の代表格である生命保険会社(生保)は、まったく違った行動にでていました。

普通に考えれば、米長期金利が上がれば、日米金利差は拡大するので、生保は円を売ってドルを買い、それによって手にしたドルで米国債を買って運用するのではないかと考えられます。

しかし、実際には、この時期、生保は、米国債を大量売却しています。

なぜなら、米国債からの収入には。インカムゲイン(金利収入)とキャピタルゲイン(債券の売却益)があります。

ですので、昨年2月3月もインカムゲインは入ってきましたが、長期金利の上昇によって債券価格は下がり、むしろ大量のキャピタルロス(債券の売却損)が発生する可能性が高まったため、それを回避しようと債券の大量売却となりました。

こうした大量売却によって手にしたドルキャッシュは、そのままプールされたので、為替相場にはドル売りとして影響は出ませんでしたが、4月になって、ドル/円相場は反落しました。

それでは、1月から3月のドル/円の上昇の原動力はなんだったかと言えば、米系ファンドのショートの買戻しと新規の買い、そして、2月、3月は、売り上がった本邦個人投資家層の買戻しでした。

そして。4月も入り、米系ファンドは、ロングの利食い売りに出ました。

ですので、今回の上昇相場についても、日米金利差拡大で投機的なロングが溜まっていくのか、あるいは値ごろ感からの売り上がりで、投機的なショートが溜まっていくのかで、相場展開は変わっていくと思われます。

生保については、3月末に本決算のため、あまり為替は触らないものと見ています。

むしろ、3月になると、多くの日本企業が決算絡みのレパトリ(企業が海外で運用している資産を国内に戻して円に換えて決算すること)によるドル売り円買いが強まるものと見ています。