本日(6月23日)はごく普通の取引日であるが、去年の今時期は歴史に残る一日だった。去年の6月23日、英国はEU離脱に関する国民投票を行い、投票後24時間内、ポンドは10%の急落を演じ、30年以来の新安値を更新していたことが記憶に新しい。世界株式市場も同サプライズを受けて急落、2016年の「ブラックスワン」として市場関係者に語り継がれてきた。

その後もポンドが下落続き、去年10月安値1.2025を記録していた。そこからやっと反騰してきたが、今年5月高値の1.3046に鑑み、2016年6月安値の1.3120を回復していないことが分かる。言ってみれば、ポンドは時間をかけて大分回復してきたが、今なお去年の「ブラックスワン」の影につつまれ、ブル基調への復帰といった状況に程遠い。

この上、今月9日英国総選挙で与党が大敗、メイ首相はすでに公信力、指導力を失われている以上、英国内の政治リスクがこれから高まる公算が大きい。EU離脱に巡る混乱が続き、年内再度総選挙の可能性も囁かれるなか、英景気回復、また英利上げの現実味がかなり薄いとみる。言ってみれば、現在の値動き、2016年EU離脱後の一環と見做した場合、昨年10月安値を起点とした切り返しはポンドの大型ベアトレンドにおけるスピード調整に過ぎず、また同スピード調整がすでに5月高値をもって頭打ちが図られたから、5月高値1.3046からすでに下落波に復帰してきた公算が大きい。そうなると、ポンドの下落余地がかなり大きく、目先の値動き、まだ初歩段階におるといえるでしょう。

カーニー英中銀総裁は利上げ、またBS縮小の可能性を否定してものの、チーフエコノミストのホールデン氏は年内利上げを示唆という矛盾したメッセージが出され、ポンドの上下をもたらしているが、ポンドの下落構造がしっかり構築されている以上、マーケットは先見性をもってこれからのファンダメンタルズや金融政策を予言しているといえる。つまり、これからしばらく英ポンドを支える材料が出にくいと思われ、年内英利上げの可能性はないと思ったほうがよいでしょう。更に、ポンドは下落トレンドへすでに復帰してきた以上、政治リスクの一段高まり、また英国から「ブラックスワン」が再度飛び出すことを警戒しておきたい。

最後に、ポンド/ドルについて弱気の見方を大分述べてきたが、ポンド/円には別の視点でフォローすべきだと思う。ポンド/円当面の焦点は200日線維持の有無にあり、維持できれば、ベアトレンドへ転換することを回避できる可能性が大きい。言うまでもないが、仮にこのような見通しが正しいであれば、それはほかならぬ、ドル/円の上昇が効いてくるわけだから、ポンド/円の底割れ回避がドル/円の上昇トレンドの継続を意味しよう。市況はいかに。