【22年11月8日】日本を除いた各国の利上げが進み、先行していた米国との金利差が縮まりつつあります。米国は今年に入り0.25%の利上げを1回、さらに0.5%の利上げを1回、その後立て続けに0.75%の利上げを4度行ってきましたが、ようやくその利上げペースをスローダウンさせる話が持ち上がってきています。他国もそれぞれの経済的な実情はあるにしても、インフレの波に逆らえず、米国に追随する形で利上げを行ってきました。米国がすぐに利上げから利下げに転じることは当分なく、高金利維持が続くと思われますが、米金利上昇だけに着目した米ドル1強の相場は、そろそろ終焉を迎えるのではないかと思っています。今日はそのことについて書きます。

  22年2月 22年6月 現在 今年通貨の強弱を左右した要因
米国(FFレート) 0.25% 1.75% 4% インフレ懸念で他国に先駆け、いち早く金融引き締め開始。利上げでも経済は強い。
日本 -0.1% -0.1% -0.1% 超低金利政策維持と輸入価格上昇で円安。政府日銀のドル売り介入で一時円高。
ユーロ圏(※) 0% 0% 2% ウクライナ情勢で下落。インフレ懸念で金融引き締めに転換。EUR安に歯止め。
英国 0.5% 1.25% 3% インフレ懸念で金融引き締めも、リセッション懸念でポンド安。一時は金融不安も。
オーストラリア 0.1% 0.85% 2.85% ウクライナ情勢で地政学的に買われるも、その後原油安や中国景気後退で下落。

上図はGLAFXが頻繁にトレードする通貨の今年の政策金利の推移を表したものです(※ユーロ圏のレートは、主要リファイナンス金利になります)。日本を除いた各国が6月以降急激に利上げを加速させた動きがわかります。では為替相場の値動きはどのように推移したでしょうか。

USDJPYは米国との金利差の拡大を背景に、2月以降着実に上昇を続けています。10月21日のNY市場で、151.95近辺をつけた後に政府日銀の介入があり、145円台まで下落しましたが、現在はレンジ内の取引になっています。140円を割らない限りは、上昇トレンドはまだ継続と考えていいと思います。

前回のブログでも紹介しましたが、EURUSDは2月からの下降チャネルの上限を上抜けし始めています。9月28日に0.9536をつけて以来、安値が切り上がっている状態です。1時間足など下位足のチャートではすでに上昇トレンドが始まっていますが、4時間足クラスになるとまだ下降トレンドが継続していると考えるトレーダーが多そうです。10月27日につけた1.0094の高値を上抜け1.01台に乗ってくると,EURUSDの下落トレンドの終了が確認されることになると思います。

そしてGBPUSDですが、9月下旬にインフレ懸念で利上げを継続しているところに、トラス政権が大規模な減税を発表しました。市場はこの英国の経済対策にたいして、株式、債券、英ポンドでトリプル安で反応し金融不安が起こり、GBPUSDは短期間に1.03台まで下落しました。その後発表した大減税などの経済対策はほとんど撤回され、BOEは債券市場に介入、トラス首相も辞任を発表して、英国の混乱は一応落ち着く形となりました。GBPUSDの日足チャートから受ける印象は、下落の底打ちです。おそらく当面1.03台に近づくことはないのではないかと思います。2月からのレジスタンスラインもそろそろ上抜けが見込まれます。1.1740近辺に引いた水平線を上抜けすると、GBPUSDの下落トレンドの終了が確認されると思います。要は大きな悪材料に対して、相場があく抜けした可能性が高いと思います。

AUDUSDの下落トレンドは、他のドルストレートとタイムラグがあり、4月から始まっています。これはロシアのウクライナ侵攻を受け、ヨーロッパに比べて地政学的リスクが低いこと、また資源国として原油や小麦などの需給のひっ迫でも問題が少ないと考えられたからだと思います。4月以降は、米国との金利差の拡大と、中国の景気後退が鮮明になるにつれて、AUDUSDも下落トレンドに入りました。依然として下降トレンド内にありますが、EURUSDと同様に下値を切り上げているようです。ただ下落トレンドの終了が確認されるのは、もう少し時間がかかります。まず0.65台にしっかり乗せてきてからの話になりそうです。

最後にドルインデックスの日足チャートも掲載しておきます。2月から上昇チャネル内で順調に上昇してきましたが、10月に入ってから上値が重い状況になってきています。緑色の水平線を下抜けると、さらに下降が継続する可能性が高くなると思います。

このように多くのドルストレートでのUSD下落は、米国との金利差の縮小、各国が抱えた通貨売りとなる悪材料が市場に消化されてきたこと、そしてこれまでの大幅な金利上昇の結果、米国がついにリセッションを迎えるのではないかという、ハードランディングのシナリオが台頭してきたことが背景にあると思います。今年これまで、USDについては悪材料が指摘されてことがほとんどありませんでした。市場にとっては、USD売りの材料をほとんど織り込んでいない状態にあると思います。JPYに関しては、金利が上昇してこない限り、これから先もJPYが買われていく局面は少ないと思います。JPYはUSDに対してだけでなく、利上げを継続している多くの国の通貨に対してさらに弱くなる可能性があります。一方で、USDに対して多くの通貨が、自律反転に向かう日がそう遠くないのではないかと考えています。

次回のブログは11月28日の更新を予定しています。