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米国株通信 2017/08/16

【今週のレポート】 AIを支えるGPUの生みの親、エヌビディア(NVDA)

基本情報: NVIDIA Corp(ナスダック証券取引所)

ティッカー : NVDA
業種    : 電子・半導体製品
最新株価 : $168.40 (2017/08/14)
時価総額 : 1,000億ドル
上場年月 : 1999年1月
EPS成長率 : +40.1%('18年1月期予想ベース)
予想PER  : 46.8倍 ('18年1月期予想ベース)
ROE実績 : 32.6%
目標株価 : $171.50(中央値、38名アナリスト)

レーティング:「強気買い」7名、「買い」14名、「保有」12名、「アンダーパフォーム」4名、「売り」1名

 画像処理半導体(GPU:グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のパイオニアで世界最大手、エヌビディア(NVDA)の時価総額が1,000億ドル(11兆円)の大台に到達し、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット=中央演算処理装置)の盟主、インテル(INTC)の背中)が見えてきました。インテルのは時価総額1,685億ドルと、2年で7倍高となってきたエヌビディアからすれば遠くない距離です。

 GPUとCPUはどちらも演算処理装置であり、ともにコンピューターの中心的役目を果たすものですが、何でも処理するCPUに対し、主に画像処理に使われるGPUはより効率的なコアで構成され、並列処理が得意なため、スピードにおいて全く異なるパフォーマンスを発揮します。3Dゲームなど、精密な画像を途切れることなく瞬時に表示させるにはGPUの並列処理が欠かせません。

 CPUはインテルの代名詞とも言え、創業者であるムーア氏が1965年に唱えた有名な「ムーアの法則」によって飛躍的に効率を高めてきました。パソコンの隆盛によってインテルはCPUで半導体の盟主となりましたが、ムーアの法則を支えた微細化技術はもう限界に近づいてきているといわれます。CPUは一つ一つのタスク処理を順番こなして行くため、僅か2~3個のコアから成ります。

 対してGPUは複数のタスクに同時に対応できるよう数千もの小さなコアで構成されており、CPUほどの精緻な処理に向いてないものの、並列処理によって圧倒的なスピードを持ち、エヌビディアが1999年に開発したものです。そして時代はパソコンからAI(人工知能)に進んでおり、AIのディープラーニング(深層学習)にはこのGPUが欠かせないものとなっています。コンピューター自身が見て、考え、自ら学習するAIは、GPUとCPUを組み合わせた同社の「アクセラレーテッド・コンピューティング」によって、ここ僅か数年で可能となってきました。アクセラレーテッド・コンピューティングとは、GPUによって加速化されたコンピュータです。

 このように「パソコンからAI」へと考えてみると、時代はCPUからGPUへ動き、エヌビディアの株価が2年で7倍になって1,000億ドルを超え、半導体盟主の座をインテルから奪おうとしている勢いを理解できると思います。「限界に達した」ムーアの法則は、パソコンがこれ以上劇的に進化しないだろうと多くの人が感じていることと通じるものと思います。

 一方、ここ数年GPUの特性を活かすことによって、AIにおける進化は目覚ましいものとなっています。車が自動運転をしたり、医師に代わってMRIなどの画像診断を行う、などの事例はGPUのディープラーニング処理によって成されてきたことで、AIは「無限の可能性」を秘めています。これが超割高な同社株価を支えている理由で、単なる投機バブルではないのです。限界に達したインテルのPER11倍に対し、無限の可能性を見せ始めたエヌビディアは40倍を超え、半導体株の中でも突出しています。

 1年前に配信した際の同社株価は53ドルでしたが、その時すでに前の年の20ドル以下だったころから短期間に倍増以上へと急騰しており、触るのは危険に感じられたほどでした。しかしそれからも大きな出来高増を見せながら節目を次々とブレークアウトすると、上抜けから一段高を演じ、現在168ドルとなってきました。

 株価上昇は業績に裏付けされたものであり、連続的に市場予想を大幅に上回る売上、利益を叩き出してきたことが大きいものです。昨年後半より、前年同期比で売上50%超、利益は100%超と大きくブレークしだし、市場予想平均を大きく超えて着地してきました。上は前年同月との比較でなく、直前の市場予想平均(それ自身も高い成長率)をそれぞれ幾ら超えたかを表したグラフです。

 そして各決算発表後の一週間に、株価とともに同社に対する利益予想数値も大きく上方修正されてきました。特に前回配信後の16年第3四半期は、売上高が市場予想平均を+19%上回り、利益も+47%上回る非常に強いものだったのでしたが、直ちにその後の利益予想がアナリストによって平均24%上方修正され、株価も一週間で33%上昇しました。

 ただ先週10日に発表された同社5-7月期決算(1月決算期)は、売上、利益とも市場予想を大幅に超えるものだったものの、地合いの悪さに加え、一部のアナリストの超強気な予想を下回った(データセンター向け売上が前年比僅か2.7倍にしかならなかったと失望)ことで、前週末までに10%近く株価は下げております。しかし下がったところでは、このなかなか下がらない有望銘柄を買うチャンスと考える投資家もおり、北朝鮮問題の緩和した今週月曜は+8%高で返しています。

 業績の方は株価と同様に、昨年に大きなブレークスルーを迎え、一気に伸びあがっています。同時に利益率が大幅に改善されていることも確認できます。

 生産はファウンドリーに任せ、同社は開発のみを行うファブレス企業です。バランスシート規模も昨年に大きくなっていますが、売上規模に見合ったものであり、内容も健全です。コンパクトなバランスシートは30%を超える高ROEにも繋がっています。

 開発を中心に行う同社は多額の研究開発費を注いでいますが、この費用は運転資金に入り、営業キャッシュフローから予め差し引かれています。残りの設備投資などの資本的支出は殆どないため、営業キャッシュフローの多くがフリーキャッシュフローとして残り、資金は潤沢です。

同社ディープラーニングと提携する企業・団体数は194倍に

 人工知能に欠かせない「ディープラーニング」は、先進的なハードウェアコンピューティングと機械学習アルゴリズムが欠かせません。そのハードウェアコンピューティングには、ディープラーニング用に同社が開発した「NVIDIA GPU アクセラレーテッド・コンピューティング・システム」が主要なAI開発フレームワークとして世界標準となっています。さらに同社はディープラーニング用のソフトウェア、ライブラリー、ツールなども揃え、AIを開発する企業や研究者を支えます。

 ディープラーニングにNVIDIAのGPUを最初に採用したのは、Baidu、Google、Facebook、Microsoftなどでした。スマホに話しかけるとAIが理解して反応する、自動翻訳する、画像を認識し自動的にタグを付与する、ユーザ一人ひとりの好みに合わせてお勧めを表示させる、などの近年出て来た驚くべきサービスが、同社のAIテクノロジ-によって可能となりました。

 同様に自社の持つビッグデータからコンピューター自身が考え、自動的に何かサービスを提供しようとする企業はどんどんと増え、ディープラーニングについてNVIDIAが協力している企業の数は、上の図のように2013年の100社から2015年までに34倍と爆発的に増えています。しかし昨年の終わりにこの数は19,439社にまで激増し、3年で194倍にもなりました。AIを使ってビジネスを拡大しようとする企業の姿は、それを可能とするエヌビディア製GPUの取り合い、ゴールドラッシュのように見えます。

 上に挙げたネット企業の例だけでなく、任天堂「スイッチ」にも同社自動運転用GPUシステムである「DRIVE PX」の一部になっている「Tegra」というモバイル用のプロセッサーが使われています。自動運転用のものは、4つのGPUが統合された自動操縦車載コンピューターであり、車自身が「見て、考えて、学習する」というこれまでになかった仕組みです。

 自動運転を例にとると、運転に係る状況判断は無限にあり(天気、路面の状態、飛び出し、巻き込み等に対応するブレーキ、ハンドル、アクセルの組み合わせ)、一つ一つのパターン処理をCPUによってプログラマーが予め無限に書き込むことなど不可能です。GPUではその超高速化された並列処理により、様々な状況をコンピューター自身がディープラーニングしてプログラムを蓄積して行くのです。つまり最初からコマンド指示を書き込んだ従来型プログラムでなく、脳の神経回路網(ニューラルネットワークというコンピューター用語)による学習機能を真似たものとなり、いろいろな分野で人間の脳を超える成果を上げだしています。

 この「ディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)」の高速化はGPUによって可能となり、これが今日のAIの進化を生んでいます。DNNのトレーニング速度は3年で50倍にもなり、次の数年でさらに10倍になると言われます。

 実は2011年にグーグルが映画をコンピューターに見せることで、猫と人の区別(認識)に初めて成功しています。しかしこれを行うのに巨大なデータセンターを要し、2,000個ものCPUをフル稼働させる必要がありました。

 これをエヌビディアののGPUシステムで行ったところ、僅か12個のGPUでディープラーニングすることで、上の2,000個のCPUと同じパフォーマンスを挙げることができたのです。ここからGPUによるディープ・ニューラル・ネットワークの高速化が始まり、前述のように3年でさらに50倍速となったのです。

 この僅か数年の進化により、今では人と猫の区別どころか、空港など混雑する場所で、特定の犯人などを認識することも可能となってきています。自動運転では、人が何か月も掛けて習得した運転技術が同社GPUによって数日で習得可能となります。医療の現場では、人が13年かけて診断できるほどの画像判断が、数時間で行えるようになりました。今や医師の眼で見逃すような小さな癌や骨折を、AIが一瞬で見つけます。

 今週の日経新聞に、アウディが、それまで2年を要していた自動運転プログラムの書き込みが、エヌビディアのAIシステムのお陰で4時間で済んだとの記事が掲載されていました。このような事で、トヨタ、ファナックなど企業が同社との提携を相次いで結んでおり、同社はこれら企業にGPUを高く売ることができます。

 パソコンからAIへ、CPUからGPUへ、インテルからエヌビディアへと時代は移っています。一昔前、世界中ほぼすべてのパソコンにインテル製CPUが入っていたように、今後自動車、医療機器、ロボット、データセンター(すでに市場を寡占するアマゾン、マイクソフト、IBMは採用済)、金融機関のシステムなど、IoTのすべてに同社のGPUが入る日も意識される、それほどの革命が起きています。これが株価高騰の背景です。

 AIが将棋などで人に勝つというのは、半世紀にわたるコンピューターの連続した進化、成果などでなく、ここ数年GPUによって革新された全く新しいアプローチによる「未来のコンピューティング」による結果なのです。コンピューターが、人間の脳のように自分で見て、考えるようになったという事で、これは従来あるコンピューター(プログラマーが処理手順を書くもの)と根本的に違うもので、具体的にはGPUを使った同社のアクセラレーテッドコンピューティングとなります。


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